ロームが圧電MEMSデバイス製造ラインを構築――受託開発製造事業も:センシング技術 圧電MEMS
ロームは、さまざまなMEMSデバイスの小型化を実現するという薄膜圧電素子(ピエゾ素子)を使用したMEMSデバイス(圧電MEMSデバイス)の製造技術を構築し、圧電MEMSデバイスの受託開発製造事業を開始したと発表した。3年後に圧電MEMS関連事業売上高として100億円を目指す。
圧電素子でMEMSデバイスの小型化が可能に
ロームは2014年8月5日、薄膜圧電(ピエゾ)素子を用いたMEMSデバイス(圧電MEMSデバイス)の製造ラインを構築し、圧電MEMSデバイス製品の自社開発製造と並行して、受託開発/製造事業を開始したと発表した。ロームによると圧電MEMSデバイス製品の受託開発/製造事業は「業界初」という。3年後に圧電MEMS関連事業売上高として100億円を目指す。
インクジェットヘッドやカメラのオートフォーカスなどに応用される圧電素子は、素子に圧力が加わえれば電圧が発生し、逆に電圧を印加させれば動くという性質を持つ。この圧電素子を、MEMSデバイスのセンサー/アクチュエータ部に使用すれば、従来のシリコンMEMSに比べセンサー/アクチュエータの制御部を単純化でき、小型化できるとされる。さらに圧電素子は、待機電力をほとんど必要としないため、消費電力も低減できる可能性を持つ。
その一方で、圧電MEMSデバイスの製造は、高圧電特性を持つ薄膜の成膜や微細な圧電体の加工、成形が難しく、MEMS駆動部の加工も高精度に行う必要があり、困難だった。
ロームグループの総合力で製造課題を克服
ロームでは、これら圧電MEMSデバイスの製造課題に対し、神戸大学大学院光学研究科教授の神野伊策氏が開発した薄膜発電素子の評価測定方法を活用。加えて、自社で培ってきた強誘電体技術や、ラピスセミコンダクタ(以下、ラピス)の高感度MEMS・実装技術やKionix(カイオニクス)のMEMS微細化技術といったロームグループの生産技術を応用することで、「さまざまな市場、用途に対応できる」という圧電MEMSの製造ラインを構築したとする。
ラピス宮崎に月産200万個規模のライン構築へ
製造ラインは、ラピスの製造子会社であるラピスセミコンダクタ宮崎(宮崎市)に構築。生産能力は、「2015年3月末までに順次拡大させ月産200万個の量産体制を整える計画」(ローム)とする。圧電MEMSの応用先としては、加速度センサー、ジャイロセンサー、圧力センサーの他、インクジェットヘッド、カメラのオートフォーカス、マイク/スピーカー、環境発電素子などを見込んでいる。
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