運転支援もインフォテインメントもソフトウェアで実現へ、シーメンスのプロジェクト:ECUを置き換える?
Siemens(シーメンス)が取り組んでいる「RACE」プロジェクトは、これまで多数のECUで構成されていた機能などを、1つのソフトウェアプラットフォームで置き換えることを目指している。複雑な車載設計が大幅に簡素化される可能性もあるという。
Siemensは、自動車向けに強力な集中型のコンピューティングリソースを提供すべく、革新的な手法の開発に取り組んでいる。これにより、現在車載向けに普及しているさまざまな種類の電子制御ユニット(ECU)や制御装置を置き換えられる可能性がある。
そうなれば、運転者支援システムなどの基本的な機能を、アプリとして実行したり、柔軟に設定できたりするというメリットが生まれるかもしれない。また、簡潔なアーキテクチャを実現できるようになることから、“複雑化した電子機器の無法地帯”のようになっている自動車の状況を改善できる可能性もある。
1台のコンピュータで制御
Siemensの研究グループが進める「RACE(Robust and Reliant Automotive Computing Environment)」プロジェクトは、自動車に搭載されるあらゆる電子機能を、1台のコンピュータで中央制御するというアイデアが基になっている。
同プロジェクトでは、新しいアーキテクチャを開発することにより、既存の安全システムや運転者支援システム、インフォテインメントシステムなどが複雑に作用し合っている現状を大幅に簡素化することを目指す。また、こうしたアイデアが実現すれば、ベンダー各社も新しい機能を非常に簡単に搭載できるようになるため、顧客に納車した後でも対応することが可能になるという。
RACEは、2012年に発足したプロジェクトだ。Siemensは今回、一部の開発状況について中間報告を発表した。研究グループは現在、バーチャルコンピューティングプラットフォームの開発に着手しようとしているところだ。物理的なハードウェアに関しては、個々の顧客の要望に応じて決まる他、必要とされる演算能力や、I/Oインタフェースまたはプロセスの数などによっても決定される。
RACEの“プラグアンドプレイ原理”を用いれば、拡張したプラットフォームを新しい要件に応じて適応させることが可能になる。
RACEプロジェクトでは現在、Siemens Corporate Technologyが数々の研究パートナー企業と共同で、システム開発を進めている。参画メンバーには、TRW AutomotiveやAVL Software、ドイツUniversity of Stuttgart、Munich Technical University(ミュンヘン工科大学)、RWTH Aachen University(アーヘン工科大学)、Fraunhofer AISEC(Fraunhofer Institute for Applied and Integrated Security)などがある。
電気自動車に向けて
Siemensの広報担当者によると、プラグアンドプレイ原理は、既存の自動車にも適用可能だが、RACEプロジェクトでは電気自動車向けに開発を進めているという。研究グループによると、2014年12月までには、電気自動車メーカーであるStreetScooterの配達用トラックに、ホストコンピュータや通信ネットワーク、ソフトウェアなどを組み込める予定だとしている。StreetScooterは、プロジェクトにおいて考案されたソフトウェア開発環境を利用するため、独自に開発した機能を自動車に搭載することができるという。
最新の普通車には70個に上るECUが搭載されている。しかもそれらは、複数ベンダーから提供されているものだ。全てのECUをスムーズに連動させることは容易ではない。Siemensは、RACEプロジェクトによって、この複雑さが大幅に緩和されるだろうと述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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