検索
ニュース

終えん間近のムーアの法則、“ポストCMOS”の技術を模索へビジネスニュース 業界動向(1/2 ページ)

米国で開催されたシンポジウム「IEEE Technology Time Machine(TTM)2014」では、“ポストCMOS”の技術について議論が交わされた。注目されているのは、量子コンピュータ、ビッグデータ、カーボンナノチューブ、人間の脳(シナプス)をまねた技術などである。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 ムーアの法則は、まだ終えんを迎えたわけではない。だが、終わりに近づいているのは明らかだ。ただし、その代替となるような基盤技術はまだ出現していない。次に登場する技術には、エンジニアたちだけでなく社会全体にとってこれまでの前提を覆すような挑戦が求められるだろう。

 こうした見解は、今後20年間の技術領域を探求するためのシンポジウム「IEEE Technology Time Machine(TTM)2014」(2014年10月21〜22日、米国カリフォルニア州サンノゼ)において導き出された結論の1つだ。同シンポジウムでは、エンジニアが今後、業界に向けて、技術の可能性や限界をどのように示していくべきかについて討論が行われた。現在では世界的に、技術に依存しながらも、その内容への理解が乏しいという傾向にあるためだ。

 コンサルタントであるRobert Colwell氏は、「技術が進展するにつれ、その複雑性は増す一方だ。このため、一般ユーザーは内容をほとんど理解できていない」と述べる。同氏は、かつてIntelでプロセッサの設計に携わった経歴を持つ。

技術の価値は低く見られている?

 Colwell氏は、厄介な課題の一例として、一般ユーザーが、スマートフォンやGPSシステムなどの複雑化の一途にある技術を当たり前の存在とみなし、その価値を低く見ているという事実について取り上げた。同氏は、「民生機器には、完璧な動作が求められる。もし欠陥が見つかれば、社会全体で非難/処罰すべき対象を探そうとする。こうした状況では、問題を解決することはできない」と指摘する。

 また同氏は、「さらに厄介なのが、技術的な知識を持っていない一般ユーザーが、討論の場において、科学的な研究結果を無視した個人的な経験を、あたかも実証された科学的根拠であるかのように述べているという問題だ」と述べる。

 ベテラン発明家であり工学教育の提唱者でもあるDean Kamen氏は、ビデオで基調講演に登壇し、その中でこの問題について触れ、以下のように述べている。

今後われわれが、エンジニアコミュニティの一員として適切な課題に焦点を当て、一般ユーザーが理解できるようサポートを提供していかなければ、将来的に、最先端技術によって得られるメリットを維持することができなくなるだろう。多くの人々が、複雑になるばかりの技術に懸念を抱き、投資を敬遠するようになっている。社会全体で最高レベルの技術を求めながら、あらゆるリスクに対する許容度は低くなる一方だ。技術によってもたらされるリスクとメリットについて、一般の人々がもっとよく理解できるようサポートしていく必要がある


 午前中の討論に参加していた3人のパネリストは全員、ムーアの法則が終えんに近づいているとの見解で一致している。またいずれも、飛躍的な技術革新を起こす機動力となるような代替技術については、まだ不明だとしている(関連記事:ムーアの法則、28nmが“最後のノード”となる可能性も)。

 スーパーコンピュータの権威であり、米インディアナ大学(Indiana University)で教授を務めるThomas Sterling氏は、「もうこれ以上、飛躍的な成長を達成してきたムーアの法則に便乗することはできない。今後は、急成長することはなくても、従来の発想を覆すような方向に移行していけるような、新たなチャンスにつながる技術を模索していく必要がある」と指摘する。

 Sterling氏は、既存のチップやコンピュータの進歩が緩やかになるであろうことから、今後20年のうちに全く新しいデバイスやノイマン型コンピュータ以外のアーキテクチャが導入されるようになると予測した。とはいえ、とりあえずは「われわれは40年前のコンセプトを元にコンピュータを作り続ける」という。

 Sterling氏や他の参加者は、今日の技術にもエネルギー効率を桁違いに向上する可能性はまだある、という見解に同意している。Sterling氏は「現在のエネルギーコストの大部分はチップ間のデータ移動によるものだ」と述べた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る