“電波ゼロゾーン”も実現可能? 無線信号を集約する技術:無線通信技術 メタサーフェス(1/2 ページ)
フランスの研究グループが、メタサーフェスを使って散乱した無線信号を受信機に集約する実験を行った。これを応用すれば“無線集中ゾーン”“無線ゼロゾーン”などを意図的に作り出し、電磁波による汚染を低減できる可能性もある。
フランスのLangevin Institute(ランジュバン研究所)の研究グループは、マイクロ波ミラーの受動アレイ利用することにより、散乱した無線信号を、受信機(例:携帯電話機)に集めることができる手法を開発したと発表した。フランスのEcole Supérieure de Physique et de Chimie Industrielles(ESPCI)at ParisTechの教授であるMathias Fink氏とGeoffroy Lerosey氏は、「Shaping Complex Microwave Fields in Reverberating Media With Binary Tunable Metasurfaces」と題する論文の中で、信号受信性能を従来の10倍に高める実験に成功したことを明らかにしている。
研究グループは、プリント基板からエッチングした長方形の銅リフレクタを、空間マイクロ波変調器として実装し、これを「電気的に同調可能なメタサーフェス」と呼んでいる。銅リフレクタはそれぞれ、寄生ストリップで結合されていて、PINダイオードによって制御されるという。
寄生ストリップをリフレクタに近接場で結合して、ハイブリッド共振器を形成する。これにより、PINダイオードで完全なストリップ共振が可能であるかどうかに応じて(電圧バイアスが0Vまたは5Vの場合)、二相位相変調(正負のいずれにも波反射が可能)を形成することが可能だという。
研究グループは今回の実験において、制御可能な電磁波リフレクタを102個使用している。これらの電磁場リフレクタは、寸法が31×45mmで、それぞれ6cmの間隔で配置されているという。再構成可能なメタサーフェスの各エレメントは、2つのシングルボードマイコン(Arduino Mega 2560)のうちの一方によって個別に制御されている。Arduino Mega 2560は、それぞれ54個のデジタル出力ポートを備えている。
今回の実験で使われたアレイの面積は0.4m2だが、ある程度の設備が整った広さ約3×3×4mのオフィス内において、信号受信性能を十分高めることができたという。
Lerosey氏は、EE Timesの電話インタビューに応じ、「今回の実験は、概念を実証するために行った。今後は、製品の実用化と市場投入を目指し、ベンチャー企業をスピンアウトさせたい」と述べている。
「このメタサーフェスが優れている点は、マイクロ波をそれ以上発生させることがないという意味で、完全に受動的であるというところだ。室内に存在している反射波を反射して変化させるだけで、エミッタと受信アンテナの間の伝送性能を最大化することができる。
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