ソニーはモバイル事業を存続できるのか:「VAIO」は手放したが……(1/2 ページ)
スマートフォンから手を引いた日本メーカーもある中、ソニーは撤退ではなく、継続を選んだ。今後は、低/中価格帯モデルをいかに売っていくのかが課題になる。
2014年11月25日に投資家やアナリスト向けに事業の方針を説明する「Sony IR Day 2014」を開催したソニー。その内容は、大言壮語ではなく、経営不振からの脱却に地道に取り組む姿勢を示すものだった。
今後3年間は、テレビと携帯電話機のポートフォリオを絞り込んでコストを削減する一方、「PlayStation 4」やイメージセンサー事業の拡大によって数十億米ドル規模の増収を目指すという。
スマホ事業を継続
だが、今回発表された3カ年計画で最も注目すべきは、スマートフォン事業に関して、同社が撤退ではなく継続の意向を示したことだ。
モバイル事業の展望については、2014年11月にソニーモバイルコミュニケーションズの新社長に就任した十時裕樹氏が、「事業規模や市場シェアの拡大ではなく、安定した利益の確保を目指す。売り上げが20〜30%が減少したとしても、利益率の高い事業に立て直したい」と説明した。
ソニーのモバイル事業は持ちこたえることができるのか、それとも改革の必要性にせまられるのか。今後3年間の動向が注目される。
十時氏は投資家説明会で、「ソニーの将来は、今後3年間で黒字転換できるかどうかにかかっている」と述べた。
同氏は質疑応答の中で、ソニーの将来的な目標について、「コミュニケーション機能を搭載した新製品の拡充と市場シェアの拡大を目指す。本格的なIoT(モノのインターネット)の時代に大きく貢献したい」と語った。
十時氏はIoT分野に関する計画について具体的には語らなかったが、同氏の発言からは、IoT時代の到来に向けて、多くの新製品を投入する構えであることが読み取れた。IoTという困難な課題に立ち向かうためにソニーが遂行すべきミッションは、組織の立て直しだ。
エレクトロニクス事業全体としては当面、ビデオゲームとデバイスの2部門が中心となってモバイル事業を支えていく形になると予想される。
ソニーは3カ年計画の下、ゲーム事業の売上高を24%増となる1兆6000億円に拡大したい考えだ。また、パーソナライズドTVやビデオ、音楽の配信サービスで、ユーザー1人当たりの売上高の増加を目指すとしている。
CMOSイメージセンサー事業などを含むデバイス部門の売上高に関しては、69%増となる約1兆5000億円を見込むという。ソニーのセンサーについては、Appleが「iPhone」に搭載する他、中国の携帯電話機メーカー各社も採用していることから、センサー部門の売上高は力強い伸びをみせている。
十時氏は、モバイル事業部門の再建計画を2015年3月末までに全て完了させる予定だとしている。2016年会計年度は、構造改革の実行に専念したい考えだ。さらに2017年会計年度(2016年4月〜)以降は、モバイル事業部門がソニーの売上高全体に対して安定的に貢献できるようになることを目指すという。
失敗の要因は?
十時氏は、モバイル事業の3カ年計画に関する説明に先立ち、ソニーが失速した要因について考察し、スマートフォン市場がいかに急激な変化を遂げてきたかを振り返った。さらに同氏は、モバイル業界が今後どう変化していくのかを予測し、ソニーがどのような対応を取るべきかという最も重要な点について語った。
十時氏は、「スマートフォン事業が悪化した最大の要因は、東南アジアや中国、欧州などの市場において、低/中価格帯モデルの重要な分野でシェアを獲得できなかったことにある」と指摘する。実際、同社の低/中価格帯モデルの売上高は大幅に減少している。
また、ソニーは、モバイル事業において地域ごとの対応を誤ったといえる。同社のスマートフォン事業はこれまで、日本国内におけるハイエンドスマートフォンの売上高に大きく依存することによって成長してきた。
ソニーの2013年会計年度のスマートフォン市場におけるシェアは、世界全体で日本市場が最も高い17.5%、次いで欧州市場が8.8%だった。アジア太平洋地域や中東/アフリカ、南アメリカなどの地域では約5%を得ているが、中国市場ではわずか0.9%、米国市場では0.7%と絶望的だ。十時氏は、「ソニーには現状、低/中価格帯モデル市場で戦える競争力がない。製品の差別化を実現できず、ライバル企業との価格競争で負けてしまう」と述べる。
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