日本の隠れた半導体優良企業「メガチップス」(前編):目指すは次のMediaTekか(1/2 ページ)
世界のファブレスチップメーカーのトップ25に入る、唯一の日本メーカーがメガチップスだ。同社は決断力と実行力に優れ、積極的にM&Aも行っている。知る人ぞ知る、隠れた優良企業であるといえるだろう。
メガチップスについて、多くを知る技術者が世界にどれほどいるだろうか。米国の技術者のほとんどは、メガチップスを知らないだろう。日本においてさえも、日本電子業界に詳しい専門家の少数が、“メガチップスというシステムLSIメーカーが大阪にある”といったわずかな情報を持っているにすぎない。
日本のIDM(垂直統合型デバイスメーカー)の大半は、一連の企業統合やファブライト化で結果を出せなかったことから弱体化してしまった。そのような中、1990年に7人の日本人技術者により親会社を持たない独立系ファブレスチップベンダーとして創立されたメガチップスは、最も成功した日本企業として生き残っている、いわば“隠れ優良企業”のような存在といっていいだろう。大阪を本拠地とする同社をよく知る観測筋は、「メガチップスは“次のMediaTek”になるべく最善を尽くそうとしているようだ」とEE Timesに話している。
IC Insightsによれば、メガチップスは世界のファブレスチップメーカーの中でトップ25に入る唯一の日本メーカーだ。2014年3月期の売上高は、584億6900万円だった。
ASICからASSPへ
メガチップス社長の高田明氏は、EE Timesとのインタビューにおいて、同社は将来の成長のために日本市場向けASICにではなくグローバル市場向けASSPに、つまり、モノのインターネット(IoT)やモバイルあるいはウェアラブル機器に向けたセンサーハブに集中するという大胆な計画を語った。
慎重なICベンダーならば、今日のスマートフォン向けアプリケーションプロセッサに参入しようとはしないだろう。その分野は既にQualcomm、Samsung Electronics、Appleによって占有されているからだ。ただ、メガチップスなどの幾つかの企業がセンサーフュージョンチップに照準を合わせている。スマートフォンベンダーが、アプリケーションプロセッサの負荷を軽減するために、個別のセンサーフュージョンチップを導入する方向へと向かっているからだ。
この動向に沿うとなると、メガチップスの戦略は大きく転換することになるだろう。同社の稼ぎ頭はASSPではなくカスタムASICだからだ。
メガチップスは、ごくわずかの国内優良システム企業と協業していることが知られている。任天堂はメガチップスのファブレス創業の初めから主要顧客の1つだ。同社は任天堂を除いては顧客リストを公表したことがないが、トップカメラメーカーのうち1社が長年にわたる顧客のようだ。
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