データ変換器編:回路技術で急激に力を付ける韓国勢:徹底プレビュー「ISSCC2015の歩き方」(4)(1/2 ページ)
今回は、A-D変換器、D-A変換器などのデータ変換器を扱う注目講演を紹介する。この分野では、韓国勢の台頭が目立つ。発表件数は、米国、オランダに次ぐ3位だ。
回路技術の「華」、アナログ・デジタル変換技術
前回の「アナログ」に続き、今回は「データ変換器」をテーマとする注目論文を紹介しよう。
「データ変換器」といっても、あるデータを別のデータに変換するとは想像できるものの、なんのことは分かりにくい。具体的には以下の3つを概ね意味する。1)アナログ信号をデジタル信号に変換するA-D変換器、2)デジタル信号をアナログ信号に変換するD-A変換器、3)時間信号をデジタル信号に変換するT-D変換器(「時間ディジタイザ」とも言う)、である。ちなみに、データ形式を変換する技術、たとえばWAV形式のデータをMP3形式に変換するような技術は「トランスコーディング」と呼んでおり、データ変換(データコンバータ、あるいはデータコンバージョン)とは区別されている。
オーディオ信号の再生媒体がアナログ信号のレコードからデジタル信号のコンパクトディスクになり、ビジュアル信号の再生媒体がアナログ信号の磁気テープから、デジタル信号のDVD(Digital Versatile Disc)になったように、いまや、ありとあらゆるアナログ信号(音声、映像、電圧、電流、温度、圧力、加速度、長さ、重さ、などの物理量)は、いったんデジタル信号に変換されてから処理されるようになってきた。
アナログ信号をA-D変換器によってデジタル信号に変換し、デジタル信号処理を加え、D-A変換器によってアナログ信号に戻すというのが、代表的な信号処理の流れである。戻したアナログ信号(再生アナログ信号)は元のアナログ信号とは、もちろん、違う。雑音が入っていたり、信号が歪んでいたりする。雑音や歪みなどの信号変化の特性を大きく左右するのが、入り口のA-D変換器である。
アナログ信号をデジタル信号に変換する方法には実は、完璧というものがない。これまでにもいろいろな変換回路が考案されてきたが、基本的には一長一短がある。それだけに、回路技術者の腕の見せ所であり、回路技術の「華」ともいえる。
実際、ISSCCで「データ変換器」をテーマとする講演のほとんどは、A-D変換器技術の発表である。ISSCC2015では全部で15件の講演が予定されている。そのうち、13件がA-D変換器技術に関する研究開発成果であり、大半を占めている。なお、データ変換器に関する発表が予定されているのはセッション15(サブテーマは「データ変換技術」、2月24日火曜日午後1時30分開始予定)と、セッション26(サブテーマは「ナイキスト・レート変換器」、2月25日水曜日午後1時30分開始予定)である。
国・地域別の発表件数では韓国が3位に付ける
データ変換器の発表機関を国別・地域別に眺めると、韓国勢の台頭が目立つ。総計15件の中で最も多いのは米国で7件(共著含む)、次にオランダが5件(共著含む)。米国とオランダは回路技術には定評があり、ISSCCのデータ変換器部門では常連といえる。しかし、韓国が4件(共著含む)でオランダに次ぐ3位というのは、異例のことだ。前年のISSCC2014ではデータ変換器に関する講演が17件あったが、データ変換器に関する韓国の発表は1件(共著含む)にすぎなかった。米国は8件(共著含む)でトップ、オランダは3件(共著含む)で2位だった。
一方、日本からの発表は、ISSCC2014で1件(東京工業大学)、今回のISSCC2015ではゼロ件である。日本における回路技術の将来が、やや心配になってしまう。
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