“日本のピュアファウンドリ”に本気で挑む三重富士通の勝算:三重富士通セミコンダクター 社長 八木春良氏(1/4 ページ)
富士通の半導体事業再編の中で2014年末に誕生したファウンドリ専業会社「三重富士通セミコンダクター」。台湾をはじめとした海外勢の独壇場となっている大口径の300mmウエハーによる半導体受託生産市場で、最先端微細加工技術、大きな生産能力を持たない同社はどう生き残って行くのか。同社社長の八木春良氏に聞いた。
半導体事業再編で生まれた「三重富士通セミコンダクター」
2014年12月、300mmウエハー半導体製造ラインを持つファウンドリ専業会社「三重富士通セミコンダクター」が発足した。
ただ、同社の発足の経緯を振り返ると決して華々しいものではない。
2013年2月、富士通は、需要変動に大きく左右され収益が安定しない半導体事業の抜本的な再編策を発表した。その骨子は、世界の半導体業界の流れに沿い「ファブレス/専業化」を進めるというもの。言い換えれば、半導体事業から、多くの固定費を持ち、多額の投資が必要となる工場を切り離すことを意味した。実際、2013年2月の再編策発表時点では、三重富士通セミコンダクターの事業母体である三重工場300mmラインは、「台湾の大手ファウンドリ企業へ移管を検討」とし、グループ外へと売却する方向性にあった。
三重工場300mmラインで製造するシステムLSIの設計/開発部門については早々とパナソニックのシステムLSI設計/開発部門と統合しファブレスシステムLSIメーカーとして独立させることが決定。その一方で、三重工場300mmラインの売却交渉は難航。結局、2014年8月に、富士通の半導体事業会社である富士通セミコンダクターの完全子会社として、三重工場をファウンドリ専業会社として独立させ、その後、台湾のファウンドリUMCから総額100億円*)を受けて事業を行っていくことが決定した。
*)2015年3月末までにまず出資比率約9.3%に相当する50億円を出資し、その後、40nmプロセス対応製造ライン構築時にさらに50億円を追加投資する内容。
こうした経緯もあり、どこか“仕方なく発足した”イメージのある三重富士通セミコンダクター。しかも、TSMCやGLOBALFOUNDRIESといった巨大な競合が存在する300mmウエハーによるファウンドリ業界で「三重富士通セミコンダクターは本当に生き残っていけるのか?」という大きな疑問を抱いてしまう。
最先端技術、大きな能力なしにどう生き残るのか?
しかし、当の三重富士通セミコンダクターは、あくまで前向きだ。富士通や、たもとを分けた富士通/パナソニックのシステムLSI設計開発統合新会社「ソシオネクスト」に頼ることなく、“日本のピュアファウンドリ”として、本気で勝ち残っていくことを目指すという。
月産3万5000枚という生産規模や先端微細プロセス投資で大きく大手ファウンドリに後れを取る三重富士通セミコンダクターがどうやって生き残っていくのか――。同社社長の八木春良氏に聞いた。
IDMは「もう潮時」
EE Times Japan あらためてですが、製造部門を分社化し、三重富士通セミコンダクターを発足させた狙いをお聞かせください。
八木春良氏 ご存じの通り、富士通が進めてきた半導体事業再編の一環だ。今さらとは思われるだろうが、半導体市場の勝ち組にならって、ファブレス、ファウンドリという形態を取った。(半導体事業に携わってきた)私自身も、(IDM=設計製造一貫企業という形態は)もう潮時だと感じていた。
EETJ 3月2日に富士通のシステムLSI設計開発事業は統合新会社ソシオネクストとして再スタートを切りました。いま一度、富士通三重セミコンダクターの事業領域、統合新会社ソシオネクストとの関係性を教えてください。
八木氏 われわれは、富士通セミコンダクターの三重工場300mmウエハーラインとその関連施設を引き継いだ。ちなみに、以前、三重工場にあった200mmウエハーラインは会津地区に移管しており、分かりやすく言えば、“三重工場の事業を継続した”ということになる。
これまで製造してきたソシオネクストの製品の生産は当然継続するが、あくまでファウンドリとして製造することになる。
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