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量子の非局所性の厳密検証に成功――新方式の量子コンピュータにも道アインシュタイン提唱の「物理学の100年論争」が決着!(2/3 ページ)

東京大学 教授の古澤明氏らの研究チームは2015年3月、約100年前にアインシュタインが提唱した「量子(光子)の非局所性」を世界で初めて厳密に検証したと発表した。検証に用いた技術は、「新方式の超高速量子暗号や超高効率量子コンピュータへの応用が可能」(古澤氏)とする。

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FMラジオの伝送方式を検証に応用

 そうした中で、オーストラリアのグリフィス大学教授のハワード・ワイズマン氏らが2010年に、単一光子にホモダイン測定を適応した検証方法「アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼン-ステアリング(EPR steering)」を用いることで、光子の非局所性を厳密に検証できる理論を提案していた。

 ホモダイン測定とは、FMラジオにおける情報伝送方式がベースで、光の電磁波としての性質を利用して、被測定光に載せた情報を読み取る方法だ。ホモダイン測定で、観測する電磁波の属性は「位相」となる。FMラジオでは、情報を伝達するために、まず情報を載せる光/電磁波(搬送波)の各位相を、観測すべき信号の分だけシフトさせ、搬送波のコピーを干渉させることで、元の信号の振幅と位相関係を復元している。この手法がホモダイン測定であり、これを光子に応用して観測する検証方法が、EPR steeringだ。


ホモダイン測定のイメージ (クリックで拡大) 出典:東京大学

 そのためEPR steeringは、観測する位相(観測位相)を変えながら対応する振幅を得ることで、光子の有無のみを検出する従来手法より、多くの情報(観測された影響が、他の離れた場所に及ぶ作用)を得ることができる。さらに被測定光と搬送波のコピーを干渉させる際に、被測定光の信号を増幅するため、光子1つのような極微弱光でも高効率に測定することができる利点もある。

 また、EPR steeringでは、光子がピンホールを通過することで無限の空間に回折する現象を、2カ所の空間に回折させて2つの量子間の非局所性を検証する方法論を提唱。単純に、離れた2つの量子の片方を観測(測定)し、もう片方の量子状態を推定することで、観測によって遠隔地の量子状態が変化したか否かを検証。その結果、常に遠隔地で観測に対応した量子状態の変化が見られれば、測定の影響(すなわち非局所性)が存在する根拠を示すことができるというものだ。なお、ワイズマン氏らは、測定の影響を確率論を用いて定量的に評価する「EPR steering不等式」を作り、同不等式を破れば、非局所性が存在する厳密な証拠となるとした。

粒子ではなく、波として

 古澤氏らの研究チームでは、EPR steeringを提唱したワイズマン氏らの協力を得て、EPR steeringの手法を用い検証を実施した。


今回の検証方法の概略図。光子の無限の広がりを2カ所に単純化。測定は、粒子性ではなく波動性に着目し、振幅/位相を計測するホモダイン測定を導入 (クリックで拡大) 出典:東京大学

 古澤氏らの検証は、生成した光子をピンホールで回折させる代わりに、入射する光の50%を反射し、残りの50%を透過する、部分反射ミラーで2つの光路に分けることで、光子が通過できる経路数を無限から2つへと減らす手法を採用。非局所性の検証において本質的な「光子の空間的な広がり」を残しつつ、実験装置を簡略化した。


検証の狙い/目的。Alice=A地点、Bob=B地点の意。 (クリックで拡大) 出典:東京大学

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