IntelのAltera買収報道、アナリストらは冷静:買収額の割に売上高は少ない?
IntelがAlteraに買収を持ちかけている――。複数のメディアがこのように報じたが、業界アナリストらは、この報道に対して冷静な見方をしているようだ。PC市場に比べてFPGA市場は規模が小さく、予想される買収金額の割に、売上高は少ないのではないか、と指摘する声もある。
米Wall Street JournalなどによるIntelのAltera買収報道について、アナリストらは冷静な見方をしている。
2015年3月27日、Wall Street JournalとReuters(ロイター)は、IntelがAlteraに買収を持ちかけていると報道した。この報道により、Alteraの株価は30分間で34.74米ドルから44.41米ドルに上昇。取引が実現すれば、Intelにとって100億〜130億米ドルの最大規模の大型買収案件になるといわれた。その後、3月30日の月曜日には上昇傾向は少し落ち着き、42米ドル付近にとどまっている。
Intelは、この買収で、低迷するPC市場以外の領域へと事業、とりわけ通信分野への拡張を狙っているといわれている。AlteraはIntel同様、比較的高い平均販売価格と利益率でチップを提供しているメーカーだ。だが、PC市場に比べて、FPGAの市場規模は小さい。一部では、「わずか20億米ドル以下の年間売上高を得るために、130億米ドルを投入するのか」という声も出ているほどだ。
ここ数年、Alteraは、次世代FPGAの製造にIntelの14nmプロセスを採用するなど、Intelと協業体制を築いてきた。買収の話が持ち上がっても不自然ではない。長年Alteraのチップを製造してきたのはTSMCだが、もちろんAlteraはTSMCとの関係も維持していくとみられている。
TSMCにダメージはない
買収報道について、台湾のアナリストたちの反応はさまざまだ。台北の調査会社Yuanta Securitiesのアナリストを務めるGeorge Chang氏は、「TSMCにとって、長い目で見ると、マイナスの影響があるだろう」と述べている。「今回の報道は、Intelがファウンドリ事業にかなり積極的になっていることを示している」(同氏)。
台北のCredit Suisse(クレディ・スイス)のアナリストであるRandy Abrams氏は、「Alteraは、10nmプロセスをFPGAに適用するかについては、まだ発表していない。10nmプロセスが、買収の行方を決めるかもしれない。だが、もし買収が実現しても、Alteraは、(設備などの)リソースやプロセスの互換性などを考慮し、20nmプロセス以前のチップ製造をTSMCに委託するだろう」と分析する。「TSMCへの経済的な影響は少ないと見ている」(同氏)。
Broadcomも候補だった
Deutsche Bank(ドイツ銀行)のアナリストであるRoss Seymore氏は、「IntelにとってAlteraは、Broadcomとともに長年の買収候補だった」と述べている。同氏は、「Alteraは14nmプロセスが必要で、Intelはそれを提供している。両社の、この関係を見れば、われわれは今回の買収話は、Intelがこれまでに行ってきたどの買収よりも、戦略的に適していると考えている。だが、Intelは2014年に、200億米ドルの株式買い戻し計画を発表しており、今回のような規模の買収は難しいのではないだろうか」と続けた。
Maybank Kim Eng SecuritiesのアナリストであるWarren Lau氏は、「半導体業界で加速している企業統合は、ファウンドリのビジネスモデルを脅かす可能性もある」と分析する。Intelの次は、600億米ドルの潤沢な現金資金を持つSamsung Electronicsが、買収に乗り出すメーカーとなるかもしれない。
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