手に乗せた“バーチャル心臓”が鼓動する! ホログラムを医療現場へ:外科手術を大きく変える可能性(2/2 ページ)
近い将来、外科手術が大きく変わるかもしれない。イスラエルRealView Imagingは、医師が手のひらに、臓器のホログラフィ画像を乗せ、自由に動かしたり触ったりできる技術を開発している。2013年には、同技術を利用して16歳の患者の心臓外科手術が行われた。
医療現場で導入進む3D画像
3D画像の有用性は、これまでにも実証されている。心臓を立体的に見ることで、外科医は患者の病巣に対する理解を深められる。MRIスキャンをベースに3Dプリンタで作成した臓器モデルを使うことで、医師は各患者の詳細な手術プランを立て、より正確で効率的な手術を行えるようになっている。こうした臓器モデルは実際に、数多くの救命医療の現場で高い評価を得ている。
*)関連記事:画像診断で高まる3D表示へのニーズ、3Dプリンタとの連携も
だが、このような臓器モデルは当然ながら“静止したまま”だ。ホログラフィック画像であれば、臓器の動きを、実際の色でリアルに表現でき、しかもリアルタイムに表示できる。
RealView Imagingは、同社の技術を説明する際に「3Dプリンティング」という言葉を使っている。「ホログラフィは、空間で3Dプリントを行っているようなものだ」(同社)。人間の脳はこのような3D映像から最も迅速かつ正確に情報を取得できるという。
*)関連記事:心臓の3次元モデルを“手元に引き寄せて”観察、ダッソーがデモを披露
2013年10月に試験プログラムを成功させたElchanan Bruckheimer医師は、「ホログラフィ画像を触ったり、マークなどを付けられたりできるのは、複雑な外科手術において非常に役に立つだろう」と話している。同医師は、16歳の患者の心臓手術の際に、RealView Imaging技術を導入した。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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