体の熱や動きで駆動するウェアラブル医療モニター、米研究チームが開発に本腰:センシング技術
米国の研究チームは、環境発電(エネルギーハーベスト)を利用するウェアラブル医療モニターの開発を進めている。体温や身体の動きを利用してフレキシブルセンサーを駆動し、生体信号をモニタリングすることを目指すという。
米ノースカロライナ州立大学(North Carolina State University)の研究チームは、ナノテクノロジーを使った超低消費電力センサー向けエネルギーハーベスト(環境発電)/ストレージデバイスの開発を進めている。この研究は連邦政府の資金の下、身体の熱や動作で電力を供給する、バッテリーが不要なウェアラブル医療モニターの実現を目指して行われている。
ノースカロライナ州立大学が主導するASSIST(Advanced Self-Powered Systems of Integrated Sensors Technologies、統合センサー技術の先端自己出力型システム)センターは2012年、米国立科学財団(NSF:National Science Foundation)から資金提供を受けて、画期的な電源を使用した健康管理向けエレクトロニクス技術の5カ年研究を開始した。
ASSISTが開発するセンサーは、2つのカテゴリに分けられる。1つは、生体電気/生化学/音響モニター向け非侵襲性ヘルスセンサーで、もう1つは、ガスや粒子状物質、温度を計測する環境センサーである。環境が生体信号にどのような変化をもたらすかについて、より正確なデータを収集することと、複合的なエネルギーハーベストを実現することを目指している。
同研究チームの産業リエゾンを務めるTom Snyder氏は、「2015 International CES」(米ラスベガス、2015年1月6〜9日)で、呼気によって起動/動作するぜんそくモニターを披露した。Snyder氏は、「オゾン*)や身体動作を計測し、心電図をモニタリングすれば、ぜんそくの発症を24時間前から予測することも可能なる」と述べた。この原理については、現在研究が進められているという。
*)オゾンは、呼吸器系によくない影響をおよぼすとされている。
「2015 International CES」でASSISTが披露したフレキシブルなシリコン(PDMS)基板。銀ナノワイヤで回路が形成されている。伸縮性があり、曲げたり丸めたりできるので、ウェアラブルセンサーに向く
このようなウェアラブルセンサーは、小型で消費電力が低く、定期的にデータを伝送しなければならない。そのため、ASSISTと研究パートナーは、複合的なエネルギーハーベストの開発に取り組んでいる。その一例として、熱エネルギーと運動エネルギーで駆動する素子を組み合わせたセンサーがある。ASSISTは2015年5月に開催する年次報告会で、熱電力を介してデータの無線伝送/収集を行うアームバンド型の心電図モニターを披露するという。
Snyder氏は、「長期的な研究を行いたい場合は、中断せずにデータを収集する必要がある。自己出力型デバイスであれば、より完全で連続したデータセットを収集できる。ウェアラブル機器にとって電力は重要な問題だ」と述べた。同氏はさらに、「こうした機器は半年ほど使った後、引き出しの中に放置されるか処分されることが多い。その原因の多くは、バッテリー切れだ」と付け加えている。
熱電材料は導電性はあるが、熱は遮断される。アームバンドの場合、体の熱を電力に変換する。材料の片面が肌に接している面よりも冷たい場合、温度差によって駆動電圧が生まれる。つまり、エネルギーハーベストとなるわけだ。
研究チームは、肌により密着させて体の熱を抽出できる伸縮性のある電極など、柔軟性のあるナノスケール材料の実現に向けて新しい熱同期技術を研究しているという。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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