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量子メモリ不要の長距離量子通信を可能にする量子中継手法を確立:量子コンピュータへの確実なマイルストーン(2/3 ページ)
NTTとトロント大学は2015年4月15日、通信距離100kmを超えるような長距離量子通信に必要な量子中継を、物質量子メモリを使用せずに、光の送受信装置だけで実現できる「全光量子中継方式」を理論的に確立したと発表した。
量子メモリ不要の新方式「時間反転型」
NTTなどが今回、提唱した理論は、物質量子メモリの使用を回避しながら、量子中継を行うもの。量子もつれ生成と量子もつれスワッピングの順序を従来方式と逆にする手法で、NTTなどは「時間反転型方式」と呼び、量子メモリを使わずに、量子通信を行える。
提唱する時間反転型方式では、各中継器自身が持つ複数の量子ビットに量子もつれスワッピングに相当する量子演算を実施する。これにより、各中継器が持つ量子ビットは全て互いに量子もつれで結ばれた状態(クラスター状態)となる。そして、中継器/送信器間で光子を伝送し、個々の量子ビットへの演算を行うことで、送信器間を量子もつれで直結し、量子通信を行う。
この際、個々の量子ビットへの演算は、失敗が許されない演算となるが、1量子ビット演算であり「任意の系で確率1で成功する」(NTT)ため、量子メモリを必要としない。なお、従来方式の量子演算(ベル測定)は2量子ビット演算であり、光子などの系では確率1で実行できない。
全光量子中継方式 (クリックで拡大) 出典:NTT
1)各中継器は量子もつれ生成用の光子と、量子もつれスワッピングに相当する量子もつれが供給され、誤り訂正符号化された光子を準備する。この状態の準備には、光子検出器、アクティブフィードフォワード技術、線型光学素子に基づく単一光子集団への逐次演算によって行われる。仮に、150nsのアクティブフィードフォワード技術を用いれば、準備は約3μsで完了する。
2)各中継器/送信器は光子を左右に伝送し、光子が出会い次第、量子もつれ生成を行う。この生成は高い確率で成功する。
3)「2)」の結果、送信器間に量子もつれが供給される。
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