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EtherCATって結局なに? 〜「ご主人様」と「メイド」で説明しよう江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る(1)(1/4 ページ)

何十台ものロボットが高速、かつ正確に動き、次々とモノを製造していく――。このような、いわゆるファクトリオートメーション(FA)を支えるネットワーク方式の1つに、EtherCATがあります。EtherCATは、高速・高精度にマシンを制御する産業向けのネットワークですが、私は、無謀(?)にも、これを使って自宅のホームセキュリティシステムを構築してみようと思い付いたのです。本連載では、その“手法”の全てを公開します。

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FA(ファクトリオートメーション)を支える「EtherCAT」。この超高度なネットワークを、無謀にも個人の“ホームセキュリティシステム”向けに応用するプロジェクトに挑みます……!! 「江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る」 連載一覧


 最近のバラエティ番組では、しばしば、自動車やお菓子を作っている工場のラインが紹介されています。

 ロボットが高速で部品を正確に装着し、選別機がベルトコンベアの上を流れるお菓子を1秒間に十何個も選別していく様子は、魔法を見ているような気すらします。

 これは、高い識別力で製品プロセスをにらみ続けるセンサーと、高精度で高速な制御を実現するロボットや装置のおかげなのですが、もう一つ、大きな仕組みがあります。

 ロボットや装置がお互いに会話するためのネットワーク ―― ファクトリオートメーション(FA)ネットワーク ―― です。

  • 「3.5秒後に通過する23列目の16番のクッキーの焼き色が悪いです」→「了解。除去します」
  • 「生クリームの温度が1.2℃高いです」→「了解。冷却工程を少し長くします」
  • 「攪拌(かくはん)装置の動作不良発生! 各工程は前後の工程の状況を把握しつつ、速やかに停止!!」

と、工場の機械がお互いに会話しているからこそ、あの「魔法の工場」は実現されているわけです。

「ご主人様/メイド」型のEtherCAT

 このFAネットワークで、もっともポピュラーな通信方式が「マスタ/スレーブ」です。

 「マスタ」とよばれる「ご主人様」が命令を出して、「スレーブ」とよばれる多くの「メイド」がその命令を実行することで、「工場の製造ライン」という「お屋敷」を管理する ―― そういう通信方式です。

 EtherCATは、このマスタ/スレーブ方式のFAネットワークの1つです。

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(この絵は、長女に描いてもらったEtherCATのコンセプト図です)

 ご主人様(マスタ)は、驚異的なスピードで大量の命令(1秒間に最大8000回)を全メイド(スレーブ)に発令し、各メイド(スレーブ)は、その大量の命令の全てに従い、実施し、その結果をご主人様(マスタ)に通知します。

 具体的には、

(1)ご主人様は、

  • 赤外線センサーを操作しているメイドに対して、ベルトコンベアーに流れる数百個のお菓子の焼き具合を報告させるように指示をし、
  • ロボットを操作しているメイドに対して、高速に流れているお菓子の中から不良品だけを取り除くために、ロボットの動かし方(アームの角度や速度)を事細かく指示をし、
  • このような微細な指示を、最大毎秒8000回、65000人のメイドに同時に発令します。

(2)一方、メイドは、

  • その1人1人が、1秒間に最大8000回というご主人様からの命令を、文句も言わずに粛々と実行し、
  • その命令による操作の結果を、ご主人様に報告します。
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