あなたの知らない「音」の世界、体に起こる不思議な反応:新技術(3/5 ページ)
体に起こる自然な反応を利用して、聞こえに関するさまざまな情報を得る――NTTコミュニケーション科学基礎研究所の研究成果だ。被験者の回答に頼らない新しい手法を利用した3つの研究成果を紹介する。
聞こえが行動を勝手に変える
「目で測る」の次は、「指で測る」という研究だ。この研究を始めたきっかけは、2014年に話題になった両耳が聞こえないといわれていた作曲家に関するニュース報道だという。そこで、本人の意思とは無関係に、音の聞こえを調べる方法を探った。利用した現象は既に知られている「感覚同期現象」だ。
実験装置のインタフェースは、押しボタンと明滅するランプ、スピーカーの3種類からなる。1秒間に2回点滅する光とタイミングを合わせてボタンを押すという単純な作業だ。このとき光の明滅と同じタイミングで音も鳴らす(図4上)。
次に、音を鳴らすタイミングだけを少しずらす(図4下)。すると、ボタンを押すタイミングが音に引きずられてしまう。ここまではこれまで知られていた現象だ。なお、音を毎回ずらす必要はなく、ランダムにずらしても同じ現象が起きる。
本当にそのような現象が起きるのか、記者が試してみた。図5の横軸は時間、縦軸は音のずれを示す。青線は音を鳴らした時刻、緑の折れ線はボタンを押したタイミングを示す。音のタイミングがずれていないときは光の明滅とボタンを押すタイミングが一致している。光に反応する時間が必要であるため、50ms程度遅れる。
音が100msずれた(青線が下に凸)ときのみ、ボタンを押すタイミングが引きずられて遅れる。記者がテストを受けた際、音を聞かないように意識してボタンを押した。だが、どうしても図5のような結果になってしまう。「意識的に抑えることは不可能だと考えている」(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)。
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