3Dプリンタで100nmオーダーの加工が可能に? エバネッセント光を使う微細加工:東大駒場リサーチキャンパス公開2015(1/2 ページ)
東京大学 先端科学技術研究センターの高橋研究室は、100nmオーダーの分解能で高速に3次元造形を行う技術開発に取り組んでいる。樹脂の硬化にエバネッセント光を使うことで、このような分解能の実現が可能だという。
近い将来、100nmオーダーで加工できる3Dプリンタが登場するかもしれない。東京大学 先端科学技術研究センターの高橋研究室は、「東大駒場リサーチキャンパス公開2015」(2015年6月5〜6日)で、ナノオーダーの分解能で3次元加工を行う技術研究を紹介した。同研究室で、約10年にわたり続けられているものだ。
この技術で最も特徴的なのは、樹脂の露光にエバネッセント光を使うことである。エバネッセント光は、屈折率が異なる媒質の間で全反射が起きた際に、屈折率が低い媒質側に、うっすらと“にじみ出る”光のことだ。その厚みは入射した光の波長以下になるので、例えば可視光を入射した場合、1μm以下という薄い層状に発光する。さらに、エバネッセント光は境界面を過ぎると指数関数的に減衰するので、光が遠くへ伝搬することはない。この性質を利用すれば、エバネッセント光が発生した層の厚み分だけ、樹脂を硬化できることになる。この技術を応用することで、100nmオーダーで寸法を制御できる3Dプリンタが実現可能になるという。
高橋研究室では、波長470nmのLEDを光源として使用し、エバネッセント光を発生させて樹脂を硬化する造形装置を開発した。エバネッセント光の上に樹脂を乗せて積層していく。
また、エバネッセント光は酸素の影響を受けやすいことから、露光部分を容器で覆って窒素を流し、溶存酸素を除去する方法を考案した。すると、より安定して露光が行えるようになったという。その結果、厚さ約500nmの層を、10層積層することに成功した。さらに、例えば、星型を成形する場合に、角が丸くならずにとがるなど、より正確な形状を成形できるようになったという。
さらに、この技術は、スキャンではなく“面”で一括して積層できるメリットもある。通常の3Dプリンタは、出力したい形状をなぞるようにスキャンしながら樹脂を積層していく。エバネッセント光を使うと、線や点ではなく面で硬化して積層するので、高速な造形が可能になる。
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