検索
ニュース

固体デバイスでもつれ電子対の空間的分離を実証――量子コンピュータの基盤“もつれ電子発生器”の実現へ道非局所性伝導のオンオフも成功!(1/2 ページ)

理化学研究所などの共同研究グループは2015年7月、超伝導体中の電子対から1つの量子もつれ状態の電子対を取り出し、空間的に離れた2つの量子ドットへ分離する新しいナノデバイスの開発に成功したと発表した。量子コンピュータなどの基盤になる“もつれ電子発生器”の実現への「大きな一歩」(同グループ)という。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 理化学研究所(理研)などの共同研究グループ*)は2015年7月、超伝導体中の電子対から1つの量子もつれ状態の電子対を取り出し、空間的に離れた2つの量子ドットへ分離する新しいナノデバイスの開発に成功したと発表した。研究チームでは「量子計算機などの基盤となるもつれ電子対発生器の実現へ大きな一歩」としている。

*)共同研究グループは理研創発物性科学研究センター量子機能システム研究グループ グループディレクターの樽茶清悟氏、同センター量子効果デバイス研究チーム 研究員のラッセル・スチュワート・ディーコン氏、大阪大学産業科学研究所 教授の大岩顕氏、東京大学 生産技術研究所 教授の平川一彦氏らで構成。


開発したナノデバイスの概念図 出典:科学技術振興機構
矢印は「もつれ電子対」の流れを表している。2つの超伝導体の間には、2個の量子ドットがあり、もつれ電子対を構成する電子を1個ずつ、それぞれの量子ドットに分離できる。

難しかった固体デバイス中での空間的分離

 量子もつれとは、2個以上の量子が特殊な相関を持っている状況を指す。この相関は、量子同士が離れていても成立する。もつれた対状態にある2つの粒子は、空間的に離れていても、1つの粒子に対する測定が、瞬時にもう一方の粒子に影響する。この現象は量子の「非局所性」と呼ばれ、もつれ光子や捕捉イオンを使って、量子状態の情報を長距離伝送する量子テレポーテーションの実験などで実証されている*)

*)関連記事:完全な量子テレポーテーションに成功

 ただ、空間的に離れた、もつれた対状態にある2つの粒子(非局所量子もつれ)を固体デバイス中で実現するのは困難とされてきた。「固体の中の電子は乱れた環境にあるため、もつれ電子対を1つだけ生成し、2つの電子を空間的に分離することが難しいため」(共同研究グループ)だ。

 こうした中で、もつれ電子対を生成するデバイスとして、超伝導体を使う研究が行われている。超伝導体は、ある温度以下になると、物質中をばらばらに動き回っていた電子が電子対を作って、全体が1つの波のような状態になり、電気抵抗がゼロになる物質だからだ。だが、「電子対を構成する2つの電子を空間的に分離し、それぞれを独立に操作できる非局所もつれ電子対を作るのは容易ではなく、その技術開発は挑戦的な課題」(共同研究グループ)だった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る