宇宙で太陽光発電して、マイクロ波で地上に! 20年後の実用化を目指すSPS:エネルギーで困らない社会へ(3/3 ページ)
宇宙空間に太陽電池を設置し、マイクロ波で地上に送電する。そうすれば天候に左右されることなく、24時間、安定した太陽光発電が可能だ――。京都大学の篠原真殻教授が、“エネルギーに困らない社会”を目指す、壮大な「宇宙太陽発電所(SPS)構想」を語った。
研究開発の現状
宇宙太陽光発電システムは1968年、米国のPeter. Glaser博士が提唱したのが始まりである。日本では1980年代から研究が始まった。2009年には「宇宙基本計画」の重要なプロジェクトの1つに記載。2014年には「エネルギー基本計画」の「取り組むべき技術課題」の1つとして記載されている。
2009〜2014年にかけては経済産業省とJAXAが連携し、「太陽光発電無線送受電技術委員会」でマイクロ波無線電力伝送試験を実施。2015年2月には、地上実証実験に成功している。今後は、2030年代にメガワット(MW)級のSPSを実用化することが目標だという。
ただ日本では、技術面での進捗(しんちょく)はあるものの、コストの関係もあり、実用化に向けて思ったようには進んでいないのが現状だという。
そうした中、米国では、戦闘機や人工衛星などを製造するNorthrop Grummanが、SPSの実用化に向けてカリフォルニア工科大学( California Institute of Technology:Caltech)に1750万米ドル投資することを決めるなどの動きがある。
エネルギーで困らない未来へ
篠原氏が描く究極の未来は「エネルギーで困らない社会」の実現だ。同氏は、「マイクロ波の制御ができずに、SPSは原子力発電と同様の運命をたどるのではないかという声もある。だが、1人のエンジニアとして科学技術でそれらの課題を解決していきたい」と力強く語った。
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