起業家精神で技術革新――中村修二氏も登壇:CDNLive Japan 2015リポート(3/3 ページ)
日本ケイデンス・デザイン・システムズは、顧客向け技術コンファレンス「CDNLive Japan 2015」を横浜で開催した。日本のユーザーら約900人が参加。基調講演セッションでは、米国本社CEOやノーベル物理学賞受賞者の中村修二氏らが講演を行った。
ツーフローMOCVD工法を発明
青色発光LEDの発明・開発は、社会生活に大きなインパクトを与えた。中村氏は、開発当時を振り返りこう述べた。「当時は、青色LEDの実現に向けて2つの材料が注目されていた。ZnSe(セレン化亜鉛)とGaN(窒化ガリウム)である。ZnSeは結晶欠陥がなく高品質だった。これに対してGaNは結晶欠陥だらけで、ほとんどの研究論文はZnSeを使ったものだった」。つまり、多くの研究者が諦めかけた材料をあえて選択したわけだ。
中村氏はGaNの結晶成長にMOCVD装置を用いて研究を行った。装置の改善などからツーフローMOCVD工法を発明。これにより高品質の成膜に成功した。そして、InGaNの発光層を挟み込む、p-n接合ダブルヘテロ構造の高輝度青色LEDを実現し、1993年11月に開発成果を発表した。従来の青色LEDに比べて100倍の明るさを達成したという。
第1世代のLEDはサファイアなどの基板上にGaNを結晶成長させた構造だった。2006年には、第2世代LEDとして、GaN on GaNの技術開発に成功した。光の取り出し効率を高めるため、チップの形状は3角形とした。「結晶性に優れているため、サファイア基板を用いた従来技術に比べて、電流密度を5〜10倍に高めることができた。このため、チップサイズも小さくできる」と話す。発光色は紫色で、太陽光に近い発光スペクトルを再現できるという。この点も従来の青色発光LEDとは異なる。さらに、「GaN on GaN技術は、結晶欠陥がないため、パワーデバイスにも適している」と述べた。
さらに、現在開発を行っているのが第3世代となるレーザー照明である。すでに100型レーザーTVが2014年のCESで紹介された。また、自動車のヘッドランプに応用すると、1km先まで明るくすることが可能になるという。
なお、CDNLive Japan 2015には、同社のユーザーを中心に約900人が参加した。基調講演セッション終了後は、「カスタムIC設計」や「PCB/IC-Package設計」「機能検証/システム設計検証」「デジタルIC設計&サインオフ」「IPソリューション」と、5つのテクニカルトラックに分かれ、同社ツールを使った事例などがそれぞれ紹介された。さらに、会場内のオープンデモコーナーでは、ARMやTSMC、キーサイト・テクノロジーなどパートナー企業12社が、ケイデンス製品を補完する製品や技術のデモ展示を行った。
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