反撃の“虎の巻”――銀行を味方につける:実録! ネット詐欺(中編)(1/5 ページ)
自分がインターネット利用詐欺に遭ったことを悟った私は、何とか正気を取り戻し、犯人に対して報復の刃を研ぎ始めました。ネット詐欺犯に対して今、自分ができる最大限の反撃に出たのです。
数十年にわたりネットワーク業界・技術に関わってきた私が、ついにインターネット利用詐欺の餌食となってしまいました。このシリーズでは、その一部始終をお伝えしたいと思います。前編はこちら
DNSのエラー画面をぼう然と見ながら、それでも何とか正気に戻った私は、ネット詐欺の対応について、ネットで調べてみることにしました(なんとなく、そのことに皮肉を感じないではありませんでしたが)。
その時の私の心境を言うと、――「金を取り戻すこと」自体については、もう諦めていました。インターネット利用詐欺(ネット詐欺)は、それ自体が既に完全犯罪みたいなものであると知っていたからです(ネットワークの研究者だったこともありますが)。
私の視点は、別の方向にシフトしていました。
「私の大切なお金をかすめとったヤツらに、今の時点でできる最大限の『嫌がらせ』をしてやる」
「そして、その『嫌がらせ』のやり方を広めて、今後のヤツらの仕事(詐欺)をやりにくくしてやる」
「報復」の一言を胸に、私は動き出したのです。
とにかく消費者センターに電話する
まず、自分の住所から一番近い消費者センターの電話番号を見つけて、そこに電話をしました。電話口に出たセンターの職員は、声の感じからは私より年配の女性のようでした。
私は、あらかじめ必要な紙に書きとめておき、それを一気にしゃべり、最後に「それで現時点における対策を教えてください」と、付け加えました。
私は、当初から「必要な手続だけ教えてもらえればそれで良い」という気持ちだったので、このような対応をしたのですが、結局、最初から一問一答で答えさせられることになりました。名前、事件の発生、経緯、などを細かく聞かれているうちに、私もイライラしてきました。
そして、私を、決定的に不愉快にさせたのは、その職員の、
『じゃあ、あなたは、相手の住所も名前も分からないのに、お金を振り込んでしまったのですか』
という一言でした。
もちろん、単なる事実の確認の発言であるとは思いますし、悪意がないことも分かっています。
しかし、詐欺の被害にあったばかりの人間に、このようなフレーズは「お前、アホか?」と同じ意味である、と思わないのか ―― と、腹が立ってきました。
『そうだよ! 私は、そのような愚かな対応をしてしまったから、アンタに電話しているんだよ!!』
と、怒鳴りたくなるのを何とか抑えて、
江端:「私は『対応』だけ教えてもらえれば十分なのですが」
(→アンタに事件の解決なんか期待していたいから、さっさと教えろ)
職員:「ケースごとの最適な対応をお教えするために、お話を伺っているのです」
(→アンタが相談してきたんだろうが。黙ってこっちの質問に答えろ)
というような、険悪なムードになってきました。
それでも、なんとか、お互い大人の対応をして、教えてもらえたことは、
・振込先の銀行への連絡
・警察に被害届けを出す
という、2つをオファーされただけでした(本当にこれだけ)。
江端:「具体的にはどのようなことをすればよいのでしょうか」
職員:「それは、ケースによりますので、銀行と警察でお聞きになってください」
(ケースごとの最適な対応を教えてくれるんじゃないのかよ!) ―― と大声を出しそうになりましたが、なんとか堪えてました。もう聞き出すことはないと判断して電話を切ろうとした、まさにその時、その職員が言いました。
「お金が戻ってくる可能性は、ほとんどないと思いますよ」
そりゃ、わざわざご親切にどーも!
―― とは、言いませんでしたどね(大人ですから)。
とはいえ、初動対応(「銀行」と「警察」)が分かったことだけでもメリットでした。「詐欺に遭ったと思った時は、まず消費者センターに相談する」は、定石で良いと思います ―― たとえ、私のように、運悪く不愉快な目に遭ったとしても、です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.