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5GはIoT制御のための移動通信だ5番目の移動通信ではない!(1/2 ページ)

ドレスデン工科大学の教授で“5G Man”との異名をとるFrank Fitzek氏に単独インタビューした。同氏は「5G(第5世代移動通信)は、IoT(モノのインターネット)を制御することだけが目標」とし遅延を1ミリ秒以内に抑えることの重要性を説いた。

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“5G Man”ことFitzek氏に単独インタビュー

 ドレスデン工科大学の教授であり、同大学通信ネットワーク学部の責任者も務めるFrank Fitzek氏は、「5G(第5世代移動通信)は一般に、旧世代の4Gに次ぐ5番目の規格だと考えられているのではないだろうか。しかし、それは全くの間違いだ。スマートフォン通信事業者でさえ、このような誤った考えを広めている」と語る。“5G Man”と呼ばれる同氏は、2015年10月6〜8日にドイツのドレスデンで開催された「SEMICON Europa 2015」において、数多くの登壇者の1人として講演を行った。

 Fitzek氏は、EE Timesとの独占インタビューにおいて、「4Gに次ぐ段階的な規格として5Gが作られたかのように考えられているが、決してそうではない。5Gは、IoT(モノのインターネット)デバイスを制御し、推進していくことだけを目標として策定された規格だ」と述べている。


“5G Man”との異名をとるドレスデン工科大学教授のFrank Fitzek氏 出典:ドレスデン工科大学

 同氏がその主張を実証するために取り上げた予測データによると、2020年には、ネットワークに同時接続されるIoTデバイスの数が最大で5000億台、最少でも500億台に達する見込みだという。同氏は、「これらのIoTデバイスの大半は、スマートフォン以外の機器である。世界の人口は、たった70億人だからだ」と指摘する。

IoTデバイスを制御することだけが目標

 Fitzek氏はEE Timesに対し、「自動車や電車、ロボット、電力網、スマートシティ、ヘルスケア、教育など、幅広い分野の5G対応コネクテッド製品の数と比べると、スマートフォンの数は、たとえ世界中の全ての人々が2台ずつ持っていたとしても非常に少ない。1人当たり2台、合計140億台のスマートフォンであれば、4Gで十分対応することができる。もちろん、5G対応スマートフォンであれば、Web検索をさらに高速化することも可能だが、5Gはそのための規格ではない。4Gでは対応不可能とされる課題の中でも、特に遅延に関する問題を解決するために策定されたのが5Gだ」と述べる。

 自動走行列車や自動運転車、自律型ロボットなど、人々が思い描くさまざまな種類のIoTデバイスを制御するには、既存の機器よりもはるかに強力な手法で接続しなければならない。そのためには、同じ信号を送信する場合に、全く別のルートを使う必要がある(Fitzek氏によれば、ルーターを追跡すると、自分が発信した信号は、常に変わらず同じエンドポイントに到達するという。TCP/IPには別のルートを使うことができる機能が備わっているにもかかわらずだ)。

遅延は「1ミリ秒でなければならない」

 同氏は、「自動運転車は、効率性と安全性の面から、一定のレイテンシ(遅延)での相互通信が求められることによって、本物のコネクテッドカーになるだろう。また、スマート工場やスマートロボットも同様に、一定のレイテンシに基づいて接続される必要がある。いわゆる『タッチインターネット(Tactile Internet)』では、離れた場所にある物を目の前にあるかのように感じることができるが、ここでも、あらゆるものに対して常に一定のレイテンシが求められる。信号がどのルートを通ろうと、レイテンシは常に同じ“1ミリ秒”でなければならない」と述べる。

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