ニュース
液体金属を細管に流すと発電できることが判明:100nVの電気信号が!!(2/2 ページ)
東北大学教授の齊藤英治氏らは2015年11月3日、液体金属柱の電子の自転運動を利用した新しい発電法を発見し、実証したと発表した。
理論計算を基に、実証実験を実施
同研究グループは、こうした理論計算に基づき、直径400μmの石英管に液体金属(ガリウム合金)を流す実証実験を実施。実際に、渦運動を駆動するために、0.1Mパスカルから0.6Mパスカルの圧力を液体金属に加え、スピン流を生成。管の流入/流出口に設置した端子で電気信号を取り出すことに成功した。加える圧力が大きいほど、取り出せる電圧も高くなり、0.6Mパスカルの圧力を加えた際に100nVを測定したとする。
同研究グループは、実証実験により「電子のスピンが、液体金属の渦運動と量子力学的に相互作用することが世界で初めて証明された」とする。
ナノロボットの電源装置などに応用可能か
今回の実証実験で得られた電気信号は100nVと極めて微弱だが、同研究グループは「微弱な電力で駆動するナノロボットの電源装置への応用が期待される」とその有効性を指摘する。さらに、「得られる電気信号の強度が流体の速度(分布)に応じて変化することを利用して、ミクロンスケールの微小な領域における流体の速度を電気で観測する流体速度計の実現も期待できる」としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- スピンを応用した“完全不揮発マイコン”を開発――消費電力は従来マイコンの1/80
東北大学とNECは2014年2月、スピントロニクス論理集積回路技術を応用した完全不揮発性マイクロコントローラ(マイコン)を開発したと発表した。無線センサー端末向けのマイコンで、動作実験の結果、消費電力は従来のマイコンの1/80だったことを確認したという。 - グラフェン超えの2次元電子機能を結晶で実現
東京工業大学笹川崇男准教授らは、二セレン化タングステンでグラフェンを超える2次元電子機能を容易に実現できる手法を開発したと発表した。スピンや光を利用するトランジスタ応用につながる新技術だという。 - 塗るだけで発電する「ペンキ」の実現か
環境中から取り出せる微量のエネルギーを電力に変える環境発電技術。この環境発電技術が大きく前進しそうだ。NECと東北大学は液体材料を塗りつけて薄い膜を作り、微弱な温度差で発電することに成功した。大面積化に向き、曲面にも対応できる。開発品で利用したスピンゼーベック効果について併せて解説する。 - 埋もれた強磁性層からスピン分解電子状態を検出、デバイスの特性向上に期待
物質・材料研究機構と東北大学の金属材料研究所および電気通信研究所の研究グループは、埋もれた強磁性層からスピン分解電子状態を検出することに成功した。共同で行った今回の研究成果は、スピントロニクスデバイスにおける特性の向上や新規材料設計への応用が期待されている。