人の肘の動きに、より近く――新6軸ロボット:新開発のアーム構造で(2/2 ページ)
セイコーエプソンの新型6軸(垂直多関節型)ロボットは、関節部分の機構を工夫したことで、人の肘に、より近い動きができるようになっている。これにより、人が作業する時と同等の600mm2のスペースがあれば設置でき、これまでよりも省スペース化を図れるという。
さらに、アームを上下に折り畳めるようになったことで、1つ1つの動線が短くなり、より効率的な動きができるようになった。タクトタイム(作業時間)のシミュレーションでは、従来比で約30%の短縮を達成したという。
Nシリーズの価格は未定だが、C4シリーズと同等レベルとしている。年間の目標販売台数は2000台である。
Nシリーズのライバル製品は「ない」
エプソンは、ロボット開発については30年以上の実績がある。自社の時計組み立て工場などでロボットを使い始めたことがきっかけだ。エプソン ロボティクスソリューションズ事業部の事業部長を務める福島米春氏は、「自身がロボットユーザーでもあるので、そのノウハウをロボット開発に反映できるという強みがある」と強調する。さらに、プリンタで培った画像処理技術や、センシング技術をロボット技術をロボットと組み合わせ、これらの技術を“パッケージ化”して提供できるという利点もある。
産業向けのスカラ(水平多関節)ロボット市場では、2011〜2014年の間、4年連続で世界シェア1位を獲得している。現在も、特に中国市場が好調だという。6軸ロボットは後発だったこともあり、まだシェアが少ないが、アームを折り畳めるという「これまでにない構造を用いたNシリーズについては、現時点ではライバル製品はない」(エプソン)と言い切り、シェア拡大への意気込みを見せた。
エプソンは、組み立て工場などの製造分野を主なターゲットとするが、福島氏は「ロボット市場は、介護や家事支援などサービス分野にも拡大している。ロボットが活躍できるチャンスは多い」と述べる。同社もサービス分野への展開も視野に入れているが、主軸になるのは製造分野だとしている。2025年度までの目標として、売上収益を現在の160億円から1000億円に拡大することを目指す。
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