“双子の水晶”で高精度化――日本電波のOCXO:MWE 2015(1/2 ページ)
日本電波工業は「MWE 2015」で、同社の主力製品であるOCXOなど一連の製品群を展示した。独自の「ツイン水晶振動子」技術を採用したOCXOは、より高精度化、より小型化を図っている。
日本電波工業は、2015年11月25〜27日に開催されている「MWE(Microwave Workshops and Exhibition) 2015」で、産業用途向けのOCXO(恒温槽付水晶発振器)やジッタアッテネータICなど、注力製品群を展示した。
2つの水晶を使って、小型/高精度を実現
まずは同社の主力製品でもある、「ツイン水晶振動子」を採用したOCXO(以下、ツインOCXO)だ。一般的にOCXOでは、サーミスタで検出した温度情報を基に補正をかけて、発振周波数を安定させている。そのため、周波数の精度がサーミスタ自体に大きく依存することになる。日本電波工業独自の技術であるツイン水晶振動子では、水晶を使って温度を検知する。“ツイン”という名の通り、基準用と温度検知用の2つの水晶振動子を使い、それらの周波数の差から温度を割り出すというものだ。これにより、LTE-TDD基地局用の製品では、0.03ppbという高い精度を実現することができた。
日本電波工業は、ツインOCXOを小型化および高精度化する方向で開発を進めるという。近年は、ツインOCXOの主なターゲット市場の1つである基地局で小型化が進み、それに伴ってOCXOでも小型化のニーズが高まっているからだ。MWE 2015では、14×9mmの製品の他、9×7mmと超小型なツインOCXOも参考品として展示した。14×9mm品では、−40〜85℃において±10ppbの精度を実現している。9×7mm品の精度は、同温度範囲内において±20ppbとしている。
高精度な製品としては、GPSで同期している基地局など向けに、Holdover規格に対応したツインOCXOを展示した。Holdover「1マイクロ秒/8時間対応」のツインOCXOの他、「1.5マイクロ秒/24時間対応」のモジュールを参考出品した。
基地局では、GPS信号が遮られた場合でも、それまでの同期データを基に、一定期間精度を確保する「Holdover」が必要になる。「1マイクロ秒/8時間対応」は、8時間の範囲において、周波数がずれた時間の合計が1マイクロ秒以下で済むよう、OCXOで精度を保持できるという意味になる。
日本電波工業は、このツインOCXOを二重のケースで囲む「ダブルケース構造」を採用することで、さらなる高精度化を実現した。ケースに風が当たると熱が奪われるため、誤差が発生する要因となる。ダブルケースにすることで熱の変化量を抑え、高精度化を図ることができた。参考出品の「1.5マイクロ秒/24時間対応」モジュールは、ダブルケースのツインOCXOに、PLL(Phase Locked Loop)回路と、周波数のずれを学習して補正する機能をモジュール化したものである。同モジュールでは、GPS信号を、入力信号としてPLL回路に直接入力している。
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