万年ダイエッターにささげる、“停滞期の正体”:世界を「数字」で回してみよう(22) ダイエット(9/10 ページ)
ダイエッターの心を蝕む最も大きな要素の1つに、「停滞期」があります。実際、停滞期から抜け出せずに挫折してしまったという方もいるのではないでしょうか。今回は、私たちダイエッターを悩ます“停滞期の正体”を、「超シンプル体重シミュレーション」という、エンジニア的な視点で探ってみましょう。
なんか「外れて」いるような気がするんですよね
――なんか「外れて」いるような気がするんですよね
後輩は、いつもの一通りのお世辞(「いいですね」「最近まれにみる良作です」など)の後で、ずばり言いました。
後輩:「最も重要な記載が、欠けています」
江端:「何?」
後輩:「江端さんは、今回ダイエットの定式化をした訳ですよね」
江端:「うん」
後輩:「簡単に言えば『食べた分のエネルギーが少なければ、ぜい肉が削り取られ、逆に、多ければ、ぜい肉が蓄えられる』ということですよね」
江端:「正しい」
後輩:「で、太っている人は、その太った体を維持するために、エネルギーを大量に消費することになる。だから、どんなに食べる量が多くても、体重に見当ったエネルギー量と同じになって、いずれは体重が増えなくなる、と」
江端:「正しい」
後輩:「一方、ダイエット中の人は、ダイエットが進むほど、その痩せた体を維持するためのエネルギーが少なくなる。だから、食べる量を少なくしていても、いずれは体重が減らなくなる、と」
江端:「正しい」
後輩:「で、それが一体何だと言うのですか」
江端:「は?」
後輩:「江端さんが行ったのは、要するに『エネルギーの平衡状態』の計算でしょ? でも、そんなことが分かったからといって、読者が『うれしい』と思いますか?」
江端:「少なくとも、『減量が期待通りに進まなくても、そんなに気にすることはないよ』とか『”停滞期”というのは”単なるノイズ”だよ』とか、言えたと思うんだけどな」
後輩:「そこは重要ではありません。重要なのは『空腹をどのように紛らせるか』というメソッド(方法)の方じゃないんですか」
江端:「え?」
後輩:「原発事故を例にしてお話しましょうか。『原発のメカニズムはこうなっています。ですから冷却水が無くなると、暴走して、メルトダウンして、大惨事になります』って言われて、一体私たちに何ができるというんですか?」
江端:「……」
後輩:「そんなことよりも、『事故を発生させないためには、どうしたらいいのか』『事故が発生してしまったら、何をしたらいいのか』の方が知りたいんじゃないですか? 原発の構造や、暴走メカニズムなんて、実際のところ、どーだっていいことですよね」
江端:「……そりゃ、まあ、そうかもしれないけど」
江端:「だから、原理なんかどーだっていいんですよ。方法を書きなさいよ、方法を。だから、いつも「外れて」いるような気がするんですよ、江端さんのコラムって」
相変わらず、血も涙もない後輩です。
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