生体を刺激/測定するシリコンと56Gbpsの次世代高速通信リンク:福田昭のデバイス通信 ISSCC 2016プレビュー(8)(2/2 ページ)
セッション22では、最先端のバイオエレクトロニクス向け要素技術の発表が相次ぐ。脊髄損傷者の運動機能回復を支援する人体埋め込みモジュールや、64チャンネルの人工蝸牛シリコンチップが登場する。セッション23では、シリコンフォトニクス技術で作製した56Gビット/秒(Gbps)の高速光リンク送信器に注目したい。
56Gビット/秒と高速のシリコンフォトニクス送信回路
2月3日(水曜日)の午後には、セッション23〜セッション28の講演セッションが予定されている。
セッション23のメインテーマは「ワイヤライン通信」、サブテーマは「電気光リンクのイノベーション」である。シリコンフォトニクス技術による高性能リンクや、非接触でシリコンダイ同士を接続する高速リンクなどの研究成果が披露される。
特に注目すべきは、シリコンフォトニクス技術によって56Gビット/秒(Gbps)の高速光リンク送信器を作製した研究成果だ。STMicroelectronicsとUniversity of Paviaの共同研究グループが概要を発表する(講演番号23.4)。同グループは以前から、高速光リンクを目指したシリコンフォトニクス技術を開発してきた。既に「PIC(Photonic IC)25G」と呼ぶシリコンフォトニクスのプラットフォームを開発済みである。光回路の大きなダイ(Photonic IC)の上に電気回路の小さなダイをフリップチップ接続によって載せることで、シリコンフォトニクスを実現する。2014年には、25Gbpsの受信器を作製して国際学会(ESSCIRC)で発表した。
ISSCCで発表するのは、受信器と対を成す送信器の試作結果である。PIC25G技術と55nmのバイポーラCMOS(BiCMOS)技術を駆使した。消費電力は300mW。
STMicroelectronicsとUniversity of Paviaの共同研究グループが以前に開発したシリコンフォトニクス技術の概要。2014年の国際学会ESSCIRCで発表したスライドから(クリックで拡大)
Intelの研究成果も興味深い。高速の近接通信システム向けに、容量結合方式で32Gbpsと超高速の双方向4チャンネル・リンクを試作した(講演番号23.2)。伝送エネルギーは4pJ/ビット。製造技術は14nmのCMOSである。
(次回に続く)
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