完全印刷工程で作製した有機TFT、何に応用する?:ナノテク展の様子を写真で紹介(1/2 ページ)
「国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」(2016年1月27〜29日)で、完全印刷工程で作製した有機TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)や、有機TFTを応用した電子ペーパー/圧力センサーなど、最新の研究成果が展された。本記事は、その一部を写真で紹介する。
早く、安く、大量に製造
次世代プリンテッドエレクトロニクス技術研究組合(JAPERA)は、印刷技術を用いたTFTアレイシートと、それを用いた圧力センサーのデモ展示を行った。印刷技術を用いることのメリットは、早く、安く、大量に製造できる点にある。
また、シリコンよりも性能は劣るが、製造工程は主に「下地加工」「印刷」「低温焼成」で済み、従来工程より短縮できる。シリコンは特性を出すために400〜1000℃の熱処理が必要だが、プリンテッド工程は100℃で済むのもメリットだ。また、1度に大面積で作製でき、工場の規模も従来より小さくて済むので、コスト削減につながるとした。
会場では、試作TFTアレイシートを用いて試作された圧力センサーシートを展示。感圧ゴムは、ある押圧範囲において、圧力に応じて抵抗が比例的に変化する。これを可変抵抗とし、コモン電極に一定電圧を加える。圧力が小さいときは、抵抗が増えTFTのドレイン電圧が低くなり、ソース電流はあまり流れない。圧力が大きいときは、抵抗が減りドレイン電圧が高くなってソース電流が流れる。ゲートのアドレスに同期してソース電流を検出することで、押された場所と押された強さが分かる動作原理となっている。
TFTアレイシートの技術的な部分は確立されているため、今後は電子ペーパーや圧力センサーなどの動作実証を行い、サイネージや大面積/高速で特性変化を検知するセンサーシートへの適用を行い、新規市場創出を狙っていくとしている。
エレクトロクロミックインク技術を活用
リコーは、電気を通して透明と着色を制御する“エレクトロクロミックインク技術”による「積層型エレクトロクロミックディスプレイ」を展示した。エレクトロクロミック材料は、電気的な酸化/還元反応により、透明と着色に変化する。同社は、分子構造を設計することで、色彩や反応電圧の制御を実現した。シアン、マゼンタ、イエローの3原色に着色し、低電圧で駆動する新しい材料を開発したという。
会場では、同技術を応用した調光メガネとアートガラスを展示。調光メガネは紫外線やまぶしさの調整に使用できる。今後は、アートガラスのような目に優しく、身の回りの色彩を豊かにする新規デバイスの実用化を進めるとしている。
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