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自動車業界にとって5Gとは何か(前編)採用は2020年よりも、もっと先(1/3 ページ)

5G(第5世代移動通信)の要件の1つに、1ミリ秒以下の遅延がある。こうした低遅延によって、5Gは自動車にも採用できると期待されている。では、自動車業界は、本当のところ5Gをどう捉えているのだろうか。

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 「Mobile World Congress(MWC) 2016」が、2016年2月22日〜25日にスペイン バルセロナで開催される。通信業界は現在、5G(第5世代移動通信)の実現に向け、あらゆる人々とモノ(自動車を含め)をつなげるため、精力的な活動を展開していることだろう。

 通信業界は、5G規格について、ミッションクリティカルな用途向けに、2ミリ秒を下回る遅延(レイテンシ)を実現できるとして推進している。このことから、スマートフォンだけでなく、自動車を含むIoE(Internet of Everything:全てのインターネット)にもネットワーク接続を拡大していきたいとする、業界全体の大きな期待がかけられていることが分かる。

自動車業界側の準備は、まだ整っていない

 しかし、自動車メーカーが実際に、5Gを採用する準備を整えているかどうかは、まったく別の問題だ。

 さらに重要なのは、業界観測筋が、「通信業界が、自動車にも使えるものとして5G規格の策定を推進しているのは、道路上の安全性を高めるためというよりも、もっと多くの帯域を確保したいという通信業界側のニーズがあるからだ」と指摘している点である。

 つまり携帯電話事業者は、無線LANとIEEE 802.11pベースのDSRC(Dedicated Short Range Communications:狭域通信)だけでなく、この他に確保できる帯域も全て使用したいと考えているのだ。将来的に、無線ストリーミングの需要に対応できるかどうかを懸念しているのであって、既存の無線LANや台頭しているDSRCが今後どうなるのかについては特に心配してはいないのである。

 DSRCは、自動車専用として開発された無線通信チャネルをベースとしていて、米国議会が1999年に確保した、5.9GHz帯を使用する。この5.9GHz帯は、アンライセンス周波数帯(免許不要の周波数帯)であり、無線LANにも使われている。

 通信事業者(キャリア)が権力を掌握しようとしているのではないかとする見方もあるが、これについては誰もが同意しているわけではない。米国の市場調査会社であるStrategy Analyticsのグローバルオートモーティブ部門でアソシエートディレクターを務めるRoger Lanctot氏は、「問題の核心は、現在、自動車メーカーとキャリアとの間で対立が進んでいるという点にあるのではないだろうか。コネクテッドカー/スマートカーを推進するコミュニティーは、キャリアを下に見る傾向にある。自動車メーカーは今後もコネクテッドカーをめぐり、主にその必要性について対立していくだろう。一方でキャリアは、直接的な収益を見込むことができないデバイス間/車両間通信に対して、なんとか盛り上がりをみせようと四苦八苦している」と指摘する。

 IHS Automotive Technologyのリサーチ担当ディレクターであり、主席アナリストを務めるEgil Juliussen氏は、「自動車業界では、5Gに対する準備がまだできていない。自動車メーカーはつい最近、4Gの導入に向けて真剣に取り組み始めたばかりだ」と主張する。

 Connected Vehicle Trade Association(CVTA)のプレジデントであるScott McCormick氏によると、V2X(Vehicle-to-everything)通信として自動車向けに利用可能な無線通信では、遅延の要件は約1ミリ秒だという。一方で4Gの遅延は約20ミリ秒だ。

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