“第4の夜明け”迎えたWi-Fi、サービスが課題に:プレーヤーの多様化による懸念も(3/3 ページ)
無線LANビジネス推進連絡会が2016年1月に開催した技術セミナーでは、Wi-Fiの市場が活性化し、用途やサービスも拡大の一途をたどることが強調された。その一方で、GoogleやFacebookなど、キャリア以外の企業の参入は、Wi-Fi市場に新たなサービスを生むとともに、懸念事項ももたらす可能性もあるようだ。
策定が進むIEEE 802.11ah
IoT向け無線LANの規格として注目されているのが、IEEE 802.11ahだ。現在、標準化の最終段階に入っていて、2016年夏から秋にかけて、策定が完了する予定になっている。
Wi-Bizが開催した技術セミナーでは、クアルコム ジャパンで標準化担当部長を務める城田雅一氏が、同規格について概要を説明した。
IEEE 802.11ahは、Wi-Fiの規格であるIEEE 802.11acの変調方式OFDM(直交周波数分割多重方式)を踏襲した物理層(PHY)と、IoT向けに最適化されたメディアアクセス制御層(MAC)がベースとなる。世界各国の1GHz帯以下(サブギガヘルツ帯)の免許不要周波数帯域を利用するもので、データレートは100Kビット/秒、通信距離は最大1kmとされている。帯域幅は1MHzと2MHzで、オプションで4MHz/8MHz/16MHzもサポートできるという。城田氏は「カバレッジがよく、とにかく低消費電力であることが特長だ。1つのチャネルで多数のノードをさばくことができる*)」と述べ、IEEE 802.11ahがIoTに適していることを強調した。
*)MAC層には、最大8191ノードを収容できる。
ただし、課題もある。「IEEE 802.11ahは、米国の規制をベースにして作られているので、それを他国で使おうとすると、どうしても問題が出てくる」(城田氏)。日本で利用する場合も、現行の920MHz帯の利用制度(電波法)の一部を改正した方が望ましいとされている。
日本で利用する場合の課題としては、具体的には次のような事項が挙げられる。
- Wi-Fiで一般的に使用されているCSMA/CA(搬送波感知多重アクセス/衝突回避方式)が利用できない
- 有用性の高い2MHzの帯域幅が、法的に許可されない
- 信号スペクトラムの形状に対する制限が極めて厳しいため、実際の送信電力が低く制限されてしまう
- 920MHz帯全体で送信時間率が制限される(デューティ比が10%など)ため、映像を伝送できない
さらに、日本だけでなく世界的な視野で見た場合、IEEE 802.11ahが使用する周波数帯域が、国によってわずかに異なっていることも、課題として挙げられる。城田氏は、「世界のどこでも2.4GHz帯および5GHz帯で使えるWi-Fiに比べ、IEEE 802.11ahは違う。そのため、規制も国によって異なるケースがある」と述べ、こうした点が普及の足かせになる可能性があるとした。
これらの課題はあるが、城田氏によるとIEEE 802.11ahへの関心は高いという。「法規制さえ整えば性能がいい。さらに、Wi-Fiの規格をベースにしているので、Wi-Fiのエコシステムの中に容易に入ることができるのは、大きなメリットになる」(城田氏)。Wi-Fi Allianceは、IEEE 802.11ahを実装した製品を「Wi-Fi HaLow」として認証するプログラムを推進している。最初のデバイス認証が完了するのは、2018年になる見込みだが、最終的な認証テストを終えていない先行デバイスが、それ以前に市場に登場する可能性もある。
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