DDR4とHBMの長所と短所:福田昭のデバイス通信 ARMが語る、最先端メモリに対する期待(12)(1/2 ページ)
今回は、HBM(High Bandwidth Memory)とDDR4 DRAMを、データ転送速度やパッケージングなどの点から比較してみる。後半は、埋め込みDRAM(eDRAM)の説明に入る。ARM ReserchのRob Aitken氏は、eDRAMが「ニッチな市場にとどまる」と予想しているが、それはなぜだろうか。
HBMの速度は10倍、コストは2倍、容量は1倍
国際会議「IEDM」のショートコースで英国ARM ReserchのエンジニアRob Aitken氏が、「System Requirements for Memories(システムがメモリに要望する事柄)」と題して講演した内容を紹介するシリーズの第12回である。
前回は、次世代のDRAM技術である「HBM(High Bandwidth Memory)」の基礎的な事柄を説明した。今回は、HBMと従来技術のDDR4 DRAMを比較検討するとともに、キャッシュ向けDRAM技術の「埋め込みDRAM(eDRAM)」の将来性を議論する。
始めに、従来技術であるDDR系列の最高速メモリ、DDR4 DRAMとHBM技術の長所と短所を項目別に概観しよう。HBMでは、本命である第2世代(HBM Gen2)を比較対象とした。
DDR4 DRAMとHBMの最も大きな違いは、データ転送速度の最大値だろう。DDR4は入出力端子当たり3.2Gビット/秒の速度で64チャンネル(64ピン)の入出力バスの場合、最大データ転送速度は25.6Gバイト/秒である。これに対してHBMは、DDR4の約10倍に相当する256Gバイト/秒の最大データ転送速度を実現できる。
パッケージングも大きく異なる。DDR4は従来と同様のフォームファクタであるDIMM(Dual In-line Memory Module)を採用している。DIMMには、パッケージに封止した数多くのDDR4 DRAMが載る。DRAMの入出力バス幅は16ビット、8ビットあるいは4ビット。DIMMの入出力バス幅は64ビットあるいは72ビット(誤り検出符号付き)である。
これに対してHBMは、CPUやGPUなどのプロセッサと中間基板(インターポーザ)を介して接続してから全体を1つのグリッドアレイパッケージに封止する。HBM単独では存在せず、プロセッサとHBMスタックを内蔵するマルチチップ・パッケージとなる。
記憶容量は、それほど変わらない。8GビットのDRAMシリコンダイを前提にすると、DDR4 DRAMのDIMMでは、16枚のシリコンダイを搭載したときに16Gバイトの記憶容量となる。HBMスタックは4枚のシリコンダイを搭載するとスタック当たりが4Gバイトである。4個のHBMスタックをまとめた場合は16Gバイトの記憶容量となり、DDR4のDIMM1枚と等しい。
製造コストはかなり違う。HBM技術だとDRAMシリコンダイのオーバーヘッドがかなりあることと、インターポーザがあるために、コストが上昇する。記憶容量当たりのコストは、DDR4を「1」とすると、HBMではおおよそ「2」となる。
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