制御の世界の“黒船”、TwinCATでメイドを動かす:江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る(9)(2/13 ページ)
SOEMに限界を感じていた私は、ベッコフオートメーションのソフトウェアPLC「TwinCAT3」に手を出しました。そう、文字通り“手を出してしまった”のです。今回は、制御の世界に「黒船」を持ち込んできたTwinCAT3を使ってメイドを動かすまでの、私の苦闘と孤闘の全容をご覧いただければと思います。
「TwinCAT3」を使うチャンスが……!
前回は、SOEM(Simple Open EtherCAT Master)を使った、EtherCATベースの江端家ホームセキュリティシステムについてお話しました。
ところが、マスタであるSOEM(PCベースのご主人様)は、PCのメモリマップの配置などを自分で読み取って、その情報をSOEM用のプログラムにベタ書きする必要があります。これがかなり面倒なのです。
それに、これはEtherCATスレーブ(メイド)が追加される度に、そのプログラムの書き直しをしなければならず、こちらも厄介です。
「そんなことは、最初から分かっていたことだろうが!」と言われればそれまでなのですが、SOEMって、フリー(無料)のオープンソースなんですよ。EtherCATを勉強したいけど、金もコネもない週末エンジニアが、SOEMにたどり着くのは仕方がないことでしょう。
―― というようなお話を、先日(2016年1月)ベッコフオートメーションの川野社長にお会いした際に、愚痴っていたところ、川野社長から、「ぜひ、弊社の『TwinCAT3』を試してください」と強く勧められました。
江端:「いや、あのですね、週末エンジニアの私に、御社のPC用のマスタを購入する金なんて……」
川野さん:「大丈夫です。TwinCAT3は無料の試用期間があります」
江端:「その試用期間が終了したら、江端家のホームセキュリティシステムが止まってしまいます。そんなものは使えません」
川野さん:「江端さんがホームセキュリティシステムを連続で起動させるのは、ご実家に帰省される1週間程度ですよね。それなら、大丈夫です。帰省される度に、無料ライセンスを更新し続ければいいのですよ」
―― 正直だなー、この人……というより、TwinCAT3の販売元の社長として、大丈夫か?
しかし、自社製品への絶対の自信と、その限りない慈愛を感じました。大切に育ててきた製品を、1人でも多くの人に試してもらいたいという熱い思いが、ビンビンと伝わってきました。
「どうやら、この人(ベッコフ日本法人社長、川野俊充さん、根っこはこっち側(エンジニア側)だ」ということが、私にも分かってきました。
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