磁気センサーの“異端児”がウェアラブルを変える:スピン制御で超高感度を実現(1/5 ページ)
超高感度磁気センサーの開発を手掛けるマグネデザインが、まったく新しい原理を採用した磁気センサー「GSR(GHz-Spin-Rotation)センサー」を開発した。現在最も普及している半導体センサーに比べて50倍の感度を実現している。
磁気センサーは“第3世代”に
磁気センサーは、方位を測定するセンサーとして、今やほとんどのスマートフォン/タブレット端末に搭載されている。愛知製鋼の元専務で、現在はマグネデザインの社長を務める本蔵義信氏は、「磁気センサーは第3世代に入っている」と話す。「第1世代は、コイルを巻いた古典的なもの。第2世代は、半導体薄膜を利用したもので、磁性材料に磁気が印加されると、電圧が発生したり抵抗が変化したりする性質を応用したもの。ホールセンサーやMR(磁気抵抗)センサーがこれにあたり、現在の磁気センサー市場の主流となっている。そして第3世代の磁気センサーは、電子スピン(以下、スピン)を制御して、磁気をセンシングするものだ。今まさに、こうした第3世代の磁気センサーの開発競争が始まりつつある」(同氏)。
第3世代の磁気センサーとしては、GMR(巨大磁気抵抗)センサーやTMR(トンネル磁気抵抗)センサー、MI(磁気インピーダンス)センサーなどがある。
そして、ここに加わるのが、マグネデザインと名古屋大学、豊田工業大学が共同開発した、まったく新しい原理を採用した「GSR(GHz-Spin-Rotation)センサー」だ。
GSRセンサーは、電圧検出用のコイルを巻いた直径10μmのアモルファスワイヤ*)を使う。磁気を検出する仕組みはこうだ。
- アモルファスワイヤの表面には、円周方向を向いたスピンが並んでいて、外部磁界が加わると、外部磁界がかけられた方向にスピンの向きが傾く
- アモルファスワイヤに1GHzのパルス電流を通電すると、表面から0.1μm程の範囲において、スピンの向きが円周方向に戻ろうとして回転する
- それに伴って磁化が変化し、誘導電圧が発生するので、それをコイルでピックアップし、電圧値から磁気に換算する
「GHz」のパルス電流で「Spin(スピン)」を「Rotate(回転)」させるので、「GSRセンサー」と名付けられた。
*)鉄やコバルトから成る合金ワイヤで、特殊な製法により、結晶構造を持たないアモルファス状態を持つもの。
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