FinFETの父、「半導体業界は次の100年も続く」:新しいトランジスタのアイデアも(1/3 ページ)
“FinFETの父”と呼ばれる研究者のChenming Hu氏は、Synopsysのユーザー向けイベントで、「半導体業界が次の100年も続くと確信している」と述べ、業界の未来が決して暗いものではないと主張した。同氏は新しいトランジスタのアイデアとして、NC-FET(負性容量トランジスタ)についても言及した。
微細化は“終わりのあるゲーム”
“FinFETの父”と評されている大学研究者のChenming Hu氏によれば、半導体のロードマップには優れたアイデアが多数あるので、ムーアの法則の終息について懸念することはないという。
Hu氏は、2016年3月30日から31日まで米国カリフォルニア州サンタクララで開催された「Synopsys Users Group」の年次イベントで講演を行い、今後数十年にわたり半導体業界を支え得る新たなトランジスタのアイデアを説明した。Hu氏の講演の1日前には、SynopsysのCEOがソフトウェア設計ツールの進歩について言及し、Hu氏と同様、楽観的な見方を示していた。
Hu氏は数百人の半導体設計者から成る聴衆に対し、「私は半導体業界が次の100年も続くことを確信している。その理由の1つとして、代替品がないことと、世界がわれわれを必要としていることが挙げられる」と語りかけた。
Hu氏は「トランジスタのサイズの縮小は終わりのあるゲームであり、われわれはその終わりに向かってレースをしている。これは周知の事実であるのに、誰も声を大にして言いたがらない」と述べた。一方で、同氏は、そのゲームの終わりと共に半導体産業も終わりを迎えるというわけではなく、ハイテク分野は半導体をベースに築かれるとも述べた。
新しいトランジスタのアイデア
NC-FET(負性容量トランジスタ)は、Hu氏が教授を務めるカリフォルニア大学バークレー校の研究室から生まれた、最新かつ最も重要なアイデアの1つだ。Hu氏らは、新しい5nmの強誘電体層を用いて、ハフニウムジルコニウム酸化物で作られた30nmプロセスのNC-FETの研究を発表した。
Hu氏は「このアイデアは基本的に、誘電体に電圧増幅器を埋め込むようなものだ。より低い電源電圧(Vdd)で、同じ性能を得られるようになるということである」と説明した。
Hu氏によれば、Vddは0.3V以下にまで下げることができるという。今後数十年、主流となるような新しいデバイス開発への道が開ける可能性がある。
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