高音質を追求したマスタークロック専用水晶発振IC:スマホ搭載可能な小型SPXOで低位相雑音を実現(2/2 ページ)
新日本無線は、デジタルオーディオのマスタークロック用水晶発振器の位相雑音を抑えることのできる発振用IC「NJU6222」を開発した。
低位相雑音を実現できた3つの理由
こうした優れた特性を実現できた要因として新日本無線は、3つの理由を挙げる。1つ目は、「これまで発振用ICは、より汎用性を持たせるために、幅広い周波数で発振できる構成が用いられたが、NJU6222は、オーディオで求められる20MHz〜50MHzの対応周波数を限定し、広く用いられる2016(2.0×1.6mm)サイズ程度のSPXOの振動子に合わせ込むなど“オーディオ向け”として割り切った設計を行ったこと」とする。その上で、2つ目に、「主な発振器メ―カー各社の複数の水晶振動子と組み合わせ、十分な発振を得ながら、位相雑音/ジッタを抑えられるようアンプゲインや各種パラメータを最適化したこと」を挙げる。そして3つ目として「MUSESシリーズなどで実績ある当社独自のローノイズプロセスを適用したこと」とする。
音質向上「効果アリ」との反響も
「一般的な水晶振動子と組み合わせるだけで、これまで特殊カットを施した水晶振動子を用いた大型水晶発振器に相当するような低位相雑音を実現できる。サンプル出荷前に、一部オーディオメーカーに対し、水晶振動子など同じ条件で発振回路だけを従来ICとNJU6222に替えて、デジタルオーディオの試聴デモを実施したところ『ボーカルが際立つ』『各楽器の音がハッキリした』など音質が向上したとの評価を得た。今後、専門家の判断などを仰ぎながら、明確に音質改善効果を得られると判断した場合には、(高音質製品ブランドの)MUSESとして展開することも検討している」(新日本無線)。
NJU6222の量産開始時期は2016年7月を予定。ベアチップないし、ウエハーで提供され、サンプル価格は1チップ当たり、30円としている。チップサイズは0.58×0.588mmで、チップ厚は130μmとなっている。
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