ダイヤモンド半導体、実用間近か:米のスタートアップが開発(1/2 ページ)
ダイヤモンドが近い将来、半導体業界にとって“親友”のような存在になるかもしれない。米国の新興企業であるAkhan Semiconductorが、ダイヤモンド半導体を確実に実現できる見込みであることを明らかにした。
Akhan Semiconductorは、ダイヤモンド半導体のプロセス処理について、米国エネルギー省(DOE:Department of Energy)傘下のアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)から認可を受ける予定だという。ダイヤモンド半導体は、シリコン半導体と比べて電子移動度が高く、消費電力が少ない上、薄型化や軽量化も可能だ。しかし、このようなダイヤモンド半導体の実現に向けて実際に最初の第一歩を踏み出したのは、Akhan Semiconductorが初めての企業となる。
同社は、米国イリノイ州ガーニー(Gurnee)に200mmウエハー工場を保有している。米国ラスベガスで2017年1月5〜8日に開催予定の「2017 International CES」において、ダイヤモンド半導体チップを搭載した消費者向け製品を発表する予定だという。
アルゴンヌ国立研究所は2000年以前から、ダイヤモンドCVD(化学気相成長)の研究開発に取り組んできた。スピンオフ企業としてAdvanced Diamond Technologiesを設立し、Innovative Micro Technologyとの協業によって、ダイヤモンドMEMSの製造を手掛ける他、SP3 Diamond Technologiesのようなダイヤモンドウエハーを専業とするメーカーに対し、完全な結晶性ダイヤモンドを蒸着することが可能なCVD装置の開発を促進してきた。
しかし現在のところ、ダイヤモンドが大きな成功を収めている分野は、宝飾品や研磨剤の他、産業用途の人工ダイヤモンドなどにとどまる。それでもアルゴンヌ国立研究所は、ダイヤモンド半導体の実現という夢を追い続けてきた。半導体やコンダクターの天然絶縁体としてダイヤモンドを利用する手法の開発に取り組み、あらゆる種類のダイヤモンド半導体の実現に向けた道筋を示してきた。
困難なn型トランジスタ製造
これまでダイヤモンドの実用化の妨げとなってきた最大の要因は、p型トランジスタの製造が非常に簡単である一方で、n型トランジスタの製造は極めて難しいという点だ。しかし、Akhan Semiconductorの創設者でありCEO(最高経営責任者)を務めるAdam Khan氏が、「Miraj Diamond Platform」と呼ぶプロセス技術を開発したことにより、この問題が解決されることになった。p型とn型の両トランジスタがそろったことで、ダイヤモンドCMOSの実現が可能になったのだ。Akhan Semiconductorは、「業界初」(同社)となるCMOS互換性を備えたダイヤモンド半導体を、近々発表できる見込みだとしている。
Khan氏は、EE Timesの独占インタビューに応じ、「当社は最近、p型とn型の両トランジスタを備えた、CMOS互換性のあるダイヤモンド半導体のデモを披露した。ダイヤモンドPIN(p型-intrinsic, undoped[真性非ドープ]-n型接合)ダイオードの製造に成功したことで、シリコンよりも100万倍高い性能と、1000分の1の薄型化を実現することができた」と述べている。
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