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MRAMの記憶素子「磁気トンネル接合」:福田昭のストレージ通信(29) 次世代メモリ、STT-MRAMの基礎(7)(1/3 ページ)
今回は、磁気トンネル接合素子に焦点を当てる。磁気トンネル接合素子においてどのように2値のデータを保持できるのか、その仕組みを解説したい。
電気的なトンネル接合と磁気的なトンネル接合の違い
国際会議「IEDM」のショートコースでCNRS(フランス国立科学研究センター)のThibaut Devolder氏が、「Basics of STT-MRAM(STT-MRAMの基礎)」と題して講演した内容を紹介するシリーズの第7回である。
前回は、磁気記憶の高密度化手法と、高密度化に伴う本質的な課題を説明した。今回は、磁気メモリ(MRAM)の記憶素子と、データ読み出しの原理を説明していく。
エレクトロニクスの世界では、「トンネル接合(Tunneling Junction)」と呼ぶ素子が少なからず、知られている。2層の金属薄膜で、極めて薄い絶縁膜を挟んだ素子である。絶縁膜の厚みが1nm前後と薄いと、電子が一定の確率で絶縁膜を通過する。これがトンネル電流である。金属薄膜に電圧バイアスを加えると、電子の通過確率(トンネル確率)が増加し、トンネル電流がより多く流れるようになる。
金属薄膜(常磁性体)によるトンネル効果は、電子のスピンとは関係なく生じる。磁気や磁性などは、基本的に考慮する必要のない現象である。
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