ウェアラブル脳波計は私たちの本音を伝えてくれる:脳波を使ったヒューマンインタフェース(1/2 ページ)
情報通信研究機構の成瀬康氏は、IEEEが開催した「ヒューマンインタフェースと脳科学」に関するセミナーで、日常での脳波計測を可能とするウェアラブル脳波計に関する研究成果を発表した。
「ウェアラブル脳波計の開発で、脳の無意識下の情報、つまり、私たちが伝えたくても伝えられない情報を人に伝える『Brain-to-Human Interface』を目指す」
米国電気電子学会(IEEE)が2016年5月25日に開催したセミナー「ヒューマンインタフェースと脳科学」で、情報通信研究機構(NICT)の成瀬康氏はこう語った。成瀬氏が研究を進めるのは、日常での脳波計測を可能とする“ウェアラブル脳波計”である。
現行の脳波計測は、大型の電極帽子を頭に取り付け、ジェル状の導電性ペーストを塗る必要がある。心電図を計測するときに使用されるジェルをイメージすると分かりやすいだろう。成瀬氏によると、「電極や導電性ペーストの扱いは専門家しか扱うことができず、また、導電性ペーストを取り除くために毎回洗髪する必要がある」という。
そこで、成瀬氏は導電性ペーストを使用することなく、頭にかぶるだけで脳波を計測することができるウェアラブル脳波計を開発した。
ジェルを使わない「ドライ電極」の開発
成瀬氏が開発したのは、ジェルを使わない「ドライ電極」である。ジェル状の導電ペーストが一般的に使われるのは、接触インピーダンスを下げるためだ、脳波は非常に微弱な信号のため、計測には脳波の信号以上のノイズを取り除かなければいけない。
「今までの入力インピーダンスは数ギガ〜数十ギガオームなのに対して、300ギガオームという世界トップクラスの性能を持つ国内企業の電極を採用し、ドライ電極を実現した。電極にアンプ(アクティブ電極)が入っているため、ノイズ対策を向上している」(成瀬氏)
また、電極帽子の形が必ずしも頭にフィットしないため、電極と頭皮の間を埋める必要もあったという。今までは、ジェル状の導電性ペーストがその役割を果たしていた。今回、「スプリング」という独自技術を用いたフレキシブルな電極チップを開発することで解決しているとした。
従来のジェル付き電極と開発した電極(電極と頭皮までの距離約1cm)を用いた計測データの比較。開発した電極が、ジェル付き電極とほぼ同じ計測ができていることが分かる (クリックで拡大) 出典:IEEE/NICT
成瀬氏は、「開発した電極とジェル付きの電極を用いて脳波の計測(電極と頭皮までの距離約1cm)を行うと、ほぼ同じ計測ができていることが分かった」と語る。
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