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ARMの新型コアでAR・VRの普及が加速か「Cortex-A73」/「Mali-G71」

「COMPUTEX TAIPEI 2016」で新しいCPUコア/GPUコアを発表したARMは、ゲームやスマートフォンでのVR(仮想現実)、AR(拡張現実)ユーザー体験を向上し、それらの普及を加速させるとしている。

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10nmプロセスで製造されるGPUコア「Mali-G71」

 ARMは台湾・台北市で5月31日〜6月4日に開催されている見本市「COMPUTEX TAIPEI 2016」において、最新型CPUコア「Cortex-A73」およびGPUコア「Mali-G71」を発表した。ゲームやVR(仮想現実)、AR(拡張現実)を新たなレベルに引き上げることにより、スマートフォン市場の需要回復をサポートできるとしている。

 スマートフォンの需要については、2016年初めにピークに達したとする兆候が見られたが、ARMとしては、携帯型デバイスにはまだ数多くのメリットがあるとみているようだ。現在、市場における携帯型デバイスの数は、PCの2倍に達している。

 Mali-G71は、TSMCの10nm FinFETプロセス技術で製造する。ARMでコンピュータ製品部門マーケティング/戦略担当バイスプレジデントを務めるNandan Nayampally氏によると、Mali-G71を搭載したスマートフォンが、2016年末から2017年初めにかけて市場投入される予定だという。

 Nayampally氏は、台北で開催された報道機関向けイベントにおいて、「Mali-G71は、スマートフォンのAR/VR性能を強化する役割を担うだろう。スマートフォンの消費電力量を従来と比べて大幅に削減しながら、ミッドレンジのノートPC向けGPUと同レベルの性能を実現することができる。また、従来のノートPC向けSoC(System on Chip)の動作電力が25Wであるのに対し、Mali-G71ベースのSoCは約3Wだ」と述べている。

 既に、HiSiliconやMediaTek、Samsung Electronicsなどの半導体メーカーが、Mali-G71のライセンス供与を受けているという。ARMは、「Cortex-A73のライセンス供与先企業は10社、Mali-G71は9社だ」としている。

市場投入は2017年前半か

 MediaTekは、「2017年前半には、ARMの新型コアを搭載した10nm FinFETプロセス適用製品を市場投入できる予定だ」と述べている。

 MediaTekでコーポレートバイスプレジデント兼無線通信事業部門担当ゼネラルマネジャーを務めるRolly Chang氏は、「MediaTekの顧客企業は、これまでにない省電力化と高性能化への要望に対応し、素晴らしいユーザーエクスペリエンスを提供することが可能なデバイスの開発に取り組んでいる。ARMとのパートナー提携により、次世代モバイルデバイスに向けて、妥協のない優れたユーザーエクスペリエンスを提供することが可能なSoCの開発を実現できると確信している」と述べている。

 ARMによると、Mali-G71は、旧品種と比べてグラフィックス性能が50%、電力効率が20%、単位面積当たりの性能が40%、それぞれ向上したという。

 Mali-G71は、ARMの第3世代GPUアーキテクチャ「Bifrost」を採用する。このBifrostは、先行する「Utgard」や「Midgard」といったアーキテクチャのイノベーションをベースに、Vulkanなどの業界標準のAPI(Application Programming Interface)向けに最適化されている。


「Midgard」と「Bifrost」 出典:ARM

 10nm FinFETプロセスで製造すると、コア当たりの面積は0.65mm2以下になる。そのサイズでは、「Cortex-A73は、ARMv8アーキテクチャを使ったコアの中では最小かつ最も効率的になる」とARMは主張する。Cortex-A73は、「Cortex-A72」に比べて性能が30%向上しているという。


「Cortex-A73」と既存コアの比較(クリックで拡大) 出典:ARM

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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