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レアメタル不要の共融系二次電池を開発正極側に電解液兼ねる液体の活物質を適用(1/2 ページ)

産業技術総合研究所(産総研)と三菱自動車工業は2016年6月9日、レアメタルを使わず、安価で環境に優しい二次電池を開発したと発表した。

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安価で環境に優しい

 産業技術総合研究所(産総研)と三菱自動車工業は2016年6月9日、レアメタルを使わず、安価で環境に優しい二次電池「共融系二次電池」を開発したと発表した。

 開発した二次電池の特長は、コバルトやニッケルなどのレアメタルと呼ばれる高価な遷移金属を含む酸化物固体が使われる正極側の活物質に「共融系液体」と呼ぶ液体を利用した点にある。産総研は「世界で初めて正極側の活物質に共融系液体を利用した」としている。

凝固点を下げる共融点組成で液体に

 共融系液体とは、2種類の固体物質を凝固温度を大幅に下げる共融点組成で混合し、融解させた液体を指す。冬季に塩化ナトリウムや塩化カルシウムを散布し凍結を防止したり、融雪したりするのも、この共融点組成を利用したものである。

 今回、産総研などは、レアメタルを含まない安価な三塩化鉄六水和物(FeCl3・6H2O)と尿素(CO(NH22)とを共融点組成で混合して液体とし、正極側の活物質として用いた。FeCl3・6H2OとCO(NH22はいずれも常温では固体だが、共融点組成により、約−7℃まで固化しなくなる。


金属リチウム負極と組み合わせた共融系二次電池(図は放電時のイメージ) 出典:産業技術総合研究所

 負極側にはリチウムイオン電池で一般的な金属リチウムと有機系の電解液を用いて共融系電池を試作した。なお、正極側の電解液は、FeCl3・6H2OとCO(NH22による液体がその役割を兼ねているため、不要だ。正極、負極の電解質液体を隔てる隔膜には、リチウムイオン伝導性の固体電解質(LISICON膜)を用いたとする。

安定した充放電動作という特長

 こうした構造を用いた二次電池(共融系二次電池)を実際に作製し、25℃と40℃での充放電特性を測定したところ、初期放電電圧が約3.4V、正極側の容量が40℃で141mAh/cm3となり、「今回用いた共融系液体が正極の活物質としてほぼ理論値*)に近い理想的な動作をしていた」(産総研)とする。

*)理論値:電圧が約3.4V、正極側の容量が共融系液体FeCl3・6H2O-尿素の重量当たりで89mAh/g、体積当たりで145mAh/cm3


25℃と40℃にて3時間ずつ充放電で測定した20サイクルの充放電曲線 出典:産業技術総合研究所
縦軸は充放電時の電池の電圧、横軸は時間経過を示している。黒線は25℃、赤線が40℃での結果である。電池容量に比べて、この条件の充放電量は部分的であり、また繰り返しのサイクル数も20回と少ないものの、ほぼ変化のない繰り返し特性が認められる。

 開発した共融系二次電池は、固体で問題になる構造劣化が生じない点に利点がある。0.5mA/cm2の一定電流密度にて、3時間放電と3時間充電とを繰り返し行った充放電試験を行ったところ、繰り返しのサイクル数も20回と少ないものの、「ほぼ変化のない繰り返し特性が認められた」(産総研)という。

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