「江バ電」で人身事故をシミュレーションしてみた:世界を「数字」で回してみよう(31) 人身事故(6/9 ページ)
1回の人身事故の損害が、とにかく「巨額」であることは、皆さんご存じだと思います。では、おおよそどれくらいの金額になるのでしょうか。そのイメージをつかむため、仮想の鉄道「江バ電」を走らせ、人身事故をシミュレーションしてみました。
「江バ電」でシミュレーションしてみた
さて、上記の調査で、かなり自己嫌悪に陥ってしまいましたが、気を取り直して、次のテーマに行ってみたいと思います。
現在、私は、仮想の鉄道会社「江端電鉄株式会社」(通称:江バ電)をコンピュータの中につくって、人身事故を発生させて、電車の遅延のシミュレーションを行っています。
今回は、この「超シンプル『江バ電』シミュレーター」を使って、人身事故による遅延の影響および被害額を、超ざっくり感で計算してみましたので、ご報告致します(シミュレーションのプログラムも全部公開します)。
まず「江バ電」ですが、これは私が毎日お世話になっている小田急電鉄の小田原線をイメージして、スペックを決めました。
といっても、相互乗り入れ、他の路線との連携(多摩線、江ノ島線など)のことは、全部忘れました。計算が面倒だったからです。
さらに言えば、駅を作るのも止めました。人身事故の発生には駅は関係がないと考えたからです。
平均時速は、定常速度の半分くらいで良いと割り切り、普通、急行、ロマンスカーなどの列車編成の違いも全て無視することにし、乗客の乗降者数についても考えるのを止めて、列車には常に定員が乗車しているという、かなりメチャクチャな単純化をしました。
そして極め付きは、片道運行しかしないという前代未聞の鉄道運行サービスです。「そんな鉄道、どこの誰が使うか!」というご意見も無視させていただきます。
繰り返しますが、今回のシミュレーションの狙いは、超ざっくりですから。
その他の仕様については、以下の図の通りです。
では、人身事故の規模によって、どの程度の遅延が発生するのかを、実際にシミュレーションプログラムを回した結果を以下にご覧いただきます。
結果は、簡単に言えば、「大きい事故ほど、大きく遅れる」ということと、その関係は、おおむね「正比例」でした。
だから、事故の規模(特に、撤収までの時間)を正確に把握できれば、遅延回復までの時間もおおむね予測が予測なのですが ―― これを、鉄道会社は、なかなかしゃべってくれないんですよね。
私は、鉄道会社に対して
- 『先ほど、頭部が衝突場所から30メートル程前方で発見されました』とか、
- 『現在、引きちぎれた右腕だけが見つかっていません』とかを、
全ての駅でアナウンスしてくれ、と頼んでいる訳ではないのです(正直なところ、頼めるものなら頼みたいし、事故現場のWeb中継をしてくれば、かなり精度の高いダイヤ復旧時刻を推測できるんだけどなぁ ―― と思ってはいます)。
そこまでダイレクトでなくても、撤収までの時間の規模感(15分コース、30分コース、120分コースなど)だけでも教えてもらえれば、かなり助かります。
鉄道会社にとって、正確な情報と公序良俗と人権の取り扱いの兼ね合いは、大変難しい問題であることは理解しているつもりです。
それに、最近は、鉄道会社でも、復旧の予測時間もちゃんとアナウンスするようになってきています(以前は、10分なのか、30分なのか、2時間なのかも教えてくれなかったことを思えば、随分な進歩です)
しかし、人身事故に対して、決定的な決め手がない(コストや時間の問題も含めて)のであれば、できる限り正確な情報を顧客に提供するのは、鉄道会社の義務のはずです。
私のようなデータアナリストにとっては、どんなえげつなく、ドロドロで、グチャグチャの情報(センテンスだけでなく、画像、映像も)でもウエルカムですので、私の携帯電話に届けてもらうようなサービスのシステム構築を検討いただきたいと思います。
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