Qualcommが5Gシステムのプロトタイプを発表:5G IoT実現への一歩(1/3 ページ)
Qualcommは、2016年6月29日〜7月1日に中国・上海で開催されている「Mobile World Congress(MWC)Shanghai 2016」のChina Mobileのブースで、第5世代移動通信(5G)システムのプロトタイプを発表した。
MWC上海2016で
Qualcommが2016年6月29日〜7月1日に中国・上海で開催中の「Mobile World Congress(MWC)Shanghai 2016」のChina Mobileのブースで発表したのは、第5世代移動通信(5G)に対応した基地局とターミナルのプロトタイプだ。FPGAとDSPベースの同システムは、「5G New Radio」(5G NR)と呼ばれる5Gの標準規格で採用されるとみられる技術や手法をテストするための早期取り組みの一環として開発された。ただし、3GPPによる5G NRの策定は2018年以降になる見通しだ。
同プロトタイプシステム発表のニュースは、3GPPがIoT(モノのインターネット)向け超低消費電力LTEの標準規格の最終案を決定した後に報じられた。新しいIoTの仕様が策定されたことで、モバイルブロードバンド用途に特化した5G NRの「フェーズ1」の策定が加速すると予想される。ただし、5G IoTの仕様とその他の課題については、2020年ごろに策定予定の「フェーズ2」に盛り込まれる見込みだ。
3〜5GHz帯の100MHz帯域幅で3Gビット/秒
Qualcommは、5G NR対応のプロトタイプシステムでサポートする2つの主要な特長いを明らかにした。チャンネル帯域幅は100MHzより広く、データ伝送レートは3Gビット/秒を上回るという。また、サブフレームを統合し、レイテンシ(遅延時間)をミリ秒レベルに抑えたという。
同システムは、周波数3G〜5GHzで動作する。同社は以前に、5Gが将来的に28G〜60GHzもしくはそれ以上の周波数に対応した場合に備えて、28GHzで動作する別のプロトタイプも発表している。
3GPPは2016年4月から、5Gの無線インタフェースに関する提案をヒアリングしてきた。2017年早々にも適切な手法の精査を開始する計画だという。5Gの最終仕様は、現行のLTEの20MHzより広い帯域幅に対応すると予想されている。5Gは、広い帯域幅と、アンテナアレイ、より高次な変調方式を組み合わせて、データ伝送レートの高速化を実現するとみられる。
5Gは、レイテンシを短縮するために、アップリンクとダウンリンクの通信を1つのデータフレームに統合すると予想される。これによって例えば、データ伝送完了後の確認応答(ACK)が自動的に送信されるようになる。現行のLTEはレイテンシが8ミリ秒だが、この手法によって1ミリ秒に短縮できるという。レイテンシが短縮できれば、複数の共有アプリケーション間でのネットワークスライシングやリンクの即時切り替えなども可能になる。
QualcommのコーポレートR&D部門でエンジニアリングバイスプレジデントを務めるJohn Smee氏は、「3GPPの動向を注視して、5G NRに新たな機能が盛り込まれ次第、プロトタイプにもその機能を搭載していく計画だ」と述べている。
Smee氏は、「3GPPは、より広いチャンネルやサブフレームの再設計など、データ伝送レートの高速化に向けた技術や手法を導入し、5G実現に向けた取り組みを開始している」と述べている。早期に定義されるとみられる他の構成要素として、Massive MIMOアンテナ、より効率的なチャネルコーディングスキーム、6GHz以下および20GHz以上のスペクトル帯のサポートを挙げた。
ミッションクリティカルなIoTサービスに関連する詳細は、5G規格の第2フェーズに追いやられる見込みだという。Qualcommは、5Gが異なる種類の無線サービスのさまざまな送信間隔に対応するようになると確信している。
Smee氏は「われわれはエコシステムを拡大しようとしている。3Gと4Gは効率面でどちらが優れているのかを示しにくい上に、市場も同じだった。一方、5GはVR(仮想現実)ヘッドセットのような新たなビジネスモデル、製品タイプ、フォームファクターを実現することを目的としている。われわれはいろいろなシナリオに順応する柔軟性のある規格を創出しようとしている」と述べた。
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