NEC、新ナノ炭素材料を発見 「IoTの勝ち筋に」:CNT発見の飯島氏「CNTとCNHの長所兼ね備える」(1/2 ページ)
NECは2016年6月30日、ナノ炭素材料の1つとして、カーボンナノホーンの繊維状集合体「カーボンナノブラシ」を新たに発見し、その作製に「世界で初めて」成功したと発表した。従来の球状カーボンナノホーン集合体より10倍以上の高い導電性を持ち、これまで困難だった産業応用において、重要な特性を兼ね備えた新ナノ材料という。2017年度中にサンプル品を提供予定だ。
「他にはない実用性に優れた材料」
「炭素棒にレーザーを当ててカーボンナノホーンを製造するが、炭素棒に鉄触媒を加えてみると、どうなるかと思ったのが始まりだった。実際に、鉄触媒を加えた炭素棒にレーザーを当てたところ、いつもと違う形状の材料ができていた。電子顕微鏡で分析してみると、一見カーボンナノチューブができたのかと思ったが、詳しく見てみるとカーボンナノホーンのような構造も見えてきた。おかしいと思い、さらに詳しく見てみると、棒状につながっている新しいナノ炭素材料を発見した」
NECのIoTデバイス研究所 主任研究員の弓削亮太氏はこう語る。NECは2016年6月30日、新ナノ炭素材料「カーボンナノブラシ」の発見と、その作製に成功したと発表した。
カーボンナノブラシは、直径2n〜5nm/長さ40n〜50nmのカーボンナノホーン(CNH)が丸棒ブラシのように、放射状、かつ、繊維状に細長く伸びて集合した「世界初」(NEC)の材料である。サイズは直径約100nmで、長さは約1μ〜10μm。「これまで困難だった産業応用で、他にはない実用性に優れた新ナノ材料」(NEC)という。
CNHより10倍以上の導電性
カーボンナノブラシは、高い導電性、分散性、吸着性という3つの特長を持つ。電子が流れやすい繊維状構造のため、カーボンナノブラシの抵抗率は球状CNH集合体の約10分の1。電気自動車などに適用すると、充放電速度が従来より10〜15%速くなるとする。
弓削氏は「現状のカーボンナノブラシは、球状CNH集合体の混合物としてでしか作製できていない。そのため、単体で評価ができるようになったら、球状CNH集合体より10倍以上の導電性が期待できる」と語る。
また、球状CNH集合体と同様に分散性が高く、溶液中でも凝集しない特長も持つ。カーボンナノチューブ(CNT)は分散性が低く、樹脂などの複合材に導電性を持たせるためには、多くの量を付加する必要があった。カーボンナノブラシは、樹脂内部でも凝集しないため、少ない量で複合材に導電性を付与できるとしている。
単位質量当たりの表面積が高いのも特長である。酸化処理を行い、CNH表面を開孔すると内部空間を利用できるからだ。市販のカーボンブラックは50〜100m2/gなのに対して、カーボンナノブラシ+球状CNH集合体の表面積は1700m2/gとなっている。これにより、キャパシターやアクチュエーターの大幅な性能向上が期待できる。
カーボンナノブラシの作製には、「レーザー蒸発法」が用いられている。炭素棒からなるターゲットにレーザーを照射し、原子状の炭素が蒸発し、その高温化でカーボンナノブラシを生成する。レーザー蒸発法は、球状CNH集合体で活用されている製造方法であり、今回ターゲットとなる炭素棒に鉄触媒を加えることで、生成を可能にした。
現状のカーボンナノブラシは、研究用途として1日約1gを製造している。しかし、球状CNH集合体の大規模な製造装置では、1日当たり1kgの製造が可能だ。つまり、「カーボンナノブラシでも1日1kgの製造を早期に実現できる」(弓削氏)とした。
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