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高温では剥がれず、光で剥がせる接着材スマホ製造での部材の仮固定が容易に(1/2 ページ)

京都大学大学院理学研究科の齊藤尚平准教授らは、高温でも十分な接着力を示し、紫外光を照射すると粘着力が減少する液晶接着材料の開発に成功した。

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「強く接着」「光で溶ける」「迅速に剥がれる」

 京都大学大学院理学研究科で准教授を務める齊藤尚平氏らは2016年7月、高温環境でも十分な接着力を示し、紫外光を照射すると粘着力が極めて小さくなる液晶接着材料の開発に成功したと発表した。「ライトメルト型接着材料」と名付けたこの仮固定用接着材料は、半導体製造プロセスなどさまざまな製造工程の接着材料として、その応用が期待できるという。

 電子部品などを仮固定する接着材料としては、これまで熱で剥(は)がすタイプの接着材料(ホットメルト型接着材料)が幅広く用いられている。ところが、これらの材料は高温になると接着力が大幅に減少するという欠点があった。このため、光で剥がすタイプの接着材料が注目されている。しかし、これまでは「光で剥がれる機能」と「高温でも接着力を維持する機能」を両立できる材料開発が難しかったという。

紫外光に応答する独自の分子

 そこで研究チームは、紫外光に応答する独自の分子を設計、合成した。この分子を基盤としてカラムナー液晶という自己凝集力の高い材料へと発展させた。これらの研究により、2つの要件を同時に満たす新機能材料「ライトメルト型接着材料」の開発に成功した。


ライトメルト型接着材料のもととなる「光に応答する液晶分子」の構造イメージ 出典:科学技術振興機構

100℃で1MPa

 研究チームは、開発したライトメルト型接着材料を2枚のガラス板に挟んで、接着性能の評価を行った。その結果、室温では1.6MPa、100℃の高温でも1.2MPaという高い接着力を得られることが分かった。一方、紫外光を照射すると液化し接着力は85%低下した。一般的なLED光源を用いて紫外光を照射すると、2〜3秒間(光量は320mJ/cm2)で剥離させることができた。また、160℃で加熱処理すれば、再び接着力を取り戻すリサイクル特性を持っていることも分かった。ライトメルト型接着材料は蛍光機能を備えており、蛍光色の違いによって接着状態と非接着状態を見分けることも可能だという。


ライトメルト型接着材料の性能 出典:科学技術振興機構
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ライトメルト型接着材料の性能を示す動画 出典:科学技術振興機構

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