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毛包器官再生で脱毛症を治療、人への臨床応用へ次世代器官再生医療の先駆けとなるか(1/2 ページ)

京セラと理化学研究所、オーガンテクノロジーズは、再生医療分野である「毛包器官再生による脱毛症の治療」に関して、共同研究を始める。細胞培養技術や移植技術の確立、細胞加工機器の開発などに取り組み、早ければ2020年にも実用化を目指す。

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脱毛症で悩む人に朗報、2020年実用化目指す

 京セラと理化学研究所、オーガンテクノロジーズは2016年7月12日、再生医療分野である「毛包器官再生による脱毛症の治療」に関して、共同研究を始めると発表した。研究チームは、細胞培養技術や移植技術の確立、細胞加工機器の開発などを行い、早ければ2020年にも実用化を目指す。

 脱毛症には、男性型脱毛症や先天性脱毛、女性の休止期脱毛などがある。治療法としては、育毛剤や自家単毛包移植術などが用いられている。しかし、これらの治療法は全ての症例に有効ではないという。こうした中で、注目を集めているのが再生毛包原基による毛包再生治療である。毛包は毛髪を生み出す器官でもあり、今回の研究成果は器官再生医療の先駆けになるとみられている。このため共同研究チームは、毛包再生という実現可能な分野から実績を重ねつつ、将来は他の臓器再生に広げていく考えである。


毛包再生医療システムの開発例 (クリックで拡大) 出典:京セラ、理化学研究所、オーガンテクノロジーズ

 理化学研究所の多細胞システム形成研究センター器官誘導研究チーム(辻孝チームリーダー)はこれまで、歯や毛包、分泌腺などにおいて器官再生が機能的に可能であることを実証してきた。ところが、ほとんどの器官形成は胎児期に起こるため、器官再生を行うには胎児組織から幹細胞を採取する必要がある。これに対して毛包は、出生後に再生を繰り返す唯一の器官だという。

 理化学研究所では辻チームリーダーらが開発した「器官原基法」を用い、成体マウスのひげや体毛の毛包器官を使って、毛包原基を再生するという技術を2012年に開発した。この再生毛包原基を、毛がないヌードマウスに移植したところ、再生毛包へと成長し、毛幹(毛)を再生できることを実証した。しかも、周囲組織である立毛筋や神経と接続されるとともに、正常な組織と同様の毛周期を繰り返すなど、機能的な器官を再生できることが分かった。辻氏は、「成体マウスへの新規移植による発毛頻度は74%となった。現在では80%の確率で発毛が確認されている」と語った。


成体マウスへの再生毛包原基移植による毛髪の再生例 (クリックで拡大) 出典:京セラ、理化学研究所、オーガンテクノロジーズ

 理化学研究所では、これらの毛包再生技術をマウスに続き、人の脱毛症治療に展開していくため、量産技術などを京セラやオーガンテクノロジーズと共同研究し、実用化に向けた開発を加速することにした。「患者自身の後頭部の皮膚から毛包を100本採取し、3週間ほど培養して100倍に増やす。これを患部に移植すれば1万本が増毛されることになる」(辻氏)。


3者は毛包再生技術を人へ臨床応用していくために共同研究を行う。左から、京セラの執行役員で研究開発本部長を務める稲垣正祥氏、理化学研究所の多細胞システム形成研究センター器官誘導研究チームでチームリーダーを務める辻孝氏、オーガンテクノロジーズの社長を務める杉村泰宏氏

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