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テラヘルツ波帯無線、通信速度は光通信の領域により高速/大容量化へ、革新続く無線通信技術(1/3 ページ)

世界が注目するテラヘルツ波帯無線通信。機器間の通信では光ファイバーからの置き換えを狙う。8K映像を非圧縮で伝送することができ、フルHD動画であれば1年分のデータを1時間で転送することも可能だ。将来は、宇宙との通信も視野に入れた研究が進む。

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静止軌道衛星など宇宙との通信も視野に

 世界が注目するテラヘルツ波帯無線通信。機器間の通信では有線(光ファイバー)からの置き換えを狙う。8K映像を非圧縮で伝送でき、フルHD動画であれば1年分のデータを1時間で転送することが可能だ。将来は、静止軌道衛星に搭載された「Zetta」スーパーコンピュータと、地球に設置された装置間でテラヘルツ波帯無線通信なども可能になるという。

 広島大学先端物質科学研究科の教授を務める藤島実氏は、「Keysight World 2016 東京」(2016年7月14〜15日)において、「光通信の速度をめざす300GHz帯超高速無線」をテーマに招待講演を行った。テラヘルツ波帯と呼ばれる275GHz以上の周波数帯域は、一般にまだ利用されていない(割り当てられていない)周波数資源である。テラヘルツ波帯の信号を用いると、光通信で実現されている100Gビット/秒級の無線通信が可能になるという。


招待講演で「300GHz帯超高速無線」について語る広島大学の藤島実教授

 藤島氏は、情報通信研究機構(NICT)やパナソニックと共同で、CMOSプロセスを用いた300GHz帯の送信回路技術を開発した。その研究成果は、「ISSCC(International Solid-State Circuit Conference)2016」で発表している。テラヘルツ波帯無線通信システム実用化に向けた基盤技術の1つである。招待講演では、共同研究の成果を踏まえ、300GHz帯CMOS回路技術及びこの技術を用いた無線実験、実用化に向けた課題などについて語った。

 藤島氏は冒頭、通信速度のトレンドについて触れた。通信技術の革新は極めて著しい。通信速度は1970年以降、有線が7年半で10倍に、無線は4年で10倍に、それぞれ高速化しているという。特に、無線通信技術の進化は顕著である。「このまま技術が進化していくと、東京オリンピック/パラリンピックが開催される2020年には、通信速度が100Gビット/秒の無線システムが現実のものとなる」と述べた。

左は藤島氏らが情報通信研究機構(NICT)やパナソニックと共同開発した、CMOSプロセスによる300GHz帯の送信回路の試作チップ。右は通信実験の模様 (クリックで拡大) 出典:広島大学

 これを実現する手段として注目されているのが、テラヘルツ波帯を用いた無線システムである。広い周波数帯域を利用することが可能で、超高速通信に有利といわれている。情報通信分野では、周波数100GHz〜3THzの電波を、テラヘルツ波帯の対象とすることが多い。こうした中で藤島氏らは、300GHz帯を用いた無線通信の基盤技術を開発し、CMOSプロセスで試作した300GHz帯の送信回路を利用して通信実験を行った。実験では、直径1cmのアンテナを使い、約10cmの距離で無線通信を行った。通信状態にある機器間の間に手を置くと電波は遮られ、用紙を入れても通信は途切れないなど、「光と電波の中間的な性質を示した」という。

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