NEDO理事長「第4次産業革命で30兆円の価値を」:2020年名目GDP600兆円達成に向けて(1/2 ページ)
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)理事長の古川一夫氏は、第4次産業革命の実現に向けたロボット・人工知能技術に関する新しいチャレンジについて記者説明会を行った。
技術開発と社会実装を同時に推進
とにかく早く、最大の成果を、社会に還元することが今試されている――。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)理事長の古川一夫氏は2016年7月28日、「第4次産業革命の実現に向けたチャレンジ」について記者説明会を行った。
政府が2016年6月2日に発表した「日本再興戦略2016」では、2020年度に「戦後最大の名目GDP600兆円の実現を目指す」ことが明記されている。2015年度の名目GDPが約500兆円のため、現状に対して約100兆円の上積みが必要になるのだ。
現状放置シナリオでは、2020年度の名目GDPは547兆円。つまり、約50兆円のギャップがある。政府は、ロボットやAI、IoT(モノのインターネット)といった「第4次産業革命」を推進することで、30兆円の新たな付加価値を生むと試算している。
古川氏は、成長戦略における第4次産業革命の実現に向けて、「NEDOは新しいチャレンジをしていく」と語る。従来は、技術開発を行ってから、社会実装に取り組むのが一般的だった。これからは、技術開発と社会実装を同時に行っていくとする。
2016年4月には、成長戦略の実現に向けて組織改編を実行した。ロボット・機械システム部を「ロボット・AI部」に改称。ロボット・AI部の中に、AIの社会実装の推進ミッションを担うAI社会実装推進室を新設した。また、応用先の広いIoT技術に関する分野横断プロジェクトなどを推進するために、「IoT推進部」を新設している。
ロボットの社会実装に向けた新しい取り組み
NEDOのロボット技術開発成果の1つである橋の点検用ロボット。桁下を移動しながら桁の撮影と画像処理を行い、橋の点検を支援する。2016年7月26日に川崎市と連携して、変場実証が行われた 出典:NEDO
ロボット分野での社会実装に向けた新しい取り組みとして、古川氏は2015年12月に開催した「ロボット事故に関する模擬裁判」を挙げた。“ロボットの過失を法で裁くことができるのか”というテーマで、弁護士や検察の経験がある専門家を招いた模擬裁判を実施することで、ロボットにおける将来の課題を先取りすることが目的という。
2016年6月には、福島イノベーション・コースト構想における「ロボットテストフィールド」と連携し、各種ロボット性能評価手法の開発に着手すると発表している。
同年7月28日には、ロボットビジネスの創出に向けた人材育成事業「ロボットサービス・ビジネススクール」を開始すると発表した。2017年4月に開校予定の大阪工業大学梅田キャンパスの「ロボティクス&デザインセンター」を拠点とする。
また、各国の代表が競う「ロボット国際競技大会」の開催も2020年に予定している。
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