新型プローブ、これまで見えなかった信号を観測:高い周波数の差動信号波形も正確に測定
テクトロニクスは、光アイソレーション型差動プローブ「TIVMシリーズ」6製品の販売を始めた。新製品を用いることで、これまでコモンモードノイズに埋もれて見えなかった信号の観測が可能となる。
高周波数帯域で優れたダイナミックレンジとCMRR実現
テクトロニクスは2016年8月24日、光アイソレーション型差動プローブ「TIVMシリーズ」6製品の販売を始めた。新製品を用いることで、これまでコモンモードノイズに埋もれて見えなかった信号の観測を可能とする。パワーエレクトロニクスにおけるフローティング測定、EMIテスト/ESD試験におけるノイズの伝搬経路解析、ノイズ環境での差動信号測定などの用途に向ける。
モーター制御やスイッチング電源の回路設計においては、効率改善や低損失化に向けて、GaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化ケイ素)ベースのパワー半導体デバイスが注目を集めている。ところが、極めて高い周波数で動作するGaNトランジスタなどの高性能半導体デバイスでは、プローブの能力限界などから、高周波数帯域ではダイナミックレンジやCMRR(同相除去比)の性能が不足し、オシロスコープで正確な波形測定が行えないケースも出てきた。
TIVMシリーズは、こうした課題に対応した製品である。光ファイバーを介することによってオシロスコープと非測定物(DUT)を電気的に絶縁する広帯域プローブ技術「IsoVu(アイソビュー)」を採用した初めての製品となる。
周波数帯域は最高1GHz、CMRR性能はDC〜100MHzで120dB、1GHzでも80dBを実現している。従来製品のCMRRは周波数帯域が100MHzになると約20dBに低下していた。これに比べると10万倍の性能だという。コモンモード電圧は2000Vである。これらの性能により、周波数帯域がDC〜1GHzにおいて、大きなコモンモード電圧があった場合でも、小さな差動信号(5mV〜50V)を正確に測定することができ、従来はコモンモードノイズに埋もれて見えなかった信号も観測することが可能になったという。
TIVMシリーズは、コントローラー部、センサーヘッド部、プローブチップ及び光ファイバーなどで構成される。特にセンサーヘッド部に内蔵されたE/Oコンバーターで入力信号を光変調信号に変換し、光ファイバーで接続されたコントローラー部に伝送したあと、電気信号に再変換される。このため、DUTとオシロスコープ側を電気的に絶縁することができるという。
なお、センサーヘッド部には光ファイバーを介してコントローラー側から電力が供給される(Power On Fiber)ため、バッテリー交換などは不要である。光ファイバー長は3mタイプと遠隔測定に便利な10mタイプの2種類ある。プローブチップと被測定物を接続するためのMMCXコネクターやMMCXスクエアピンアダプターなども用意している。
TIVMシリーズとして今回は6製品を用意した。周波数帯域が200MHz/500MHz/1GHzと3タイプの製品があり、それぞれに光ファイバーケーブル長が3mと10mの製品を用意している。価格(税別)は、周波数帯域200MHzでケーブル長3mの「TIVM02」で158万円。周波数帯域1GHzでケーブル長10mの「TIVM1L」は306万円となっている。
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