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電子化物ガラスを開発、転移温度が大幅に低下わずか3%の酸素イオンを電子に置き換え(1/2 ページ)

東京工業大学の細野秀雄氏らによる研究チームは、電子化物ガラスが、従来のガラスとは大きく異なる物性を持つことを、実験と計算で初めて明らかにした。

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これまでの常識を覆す、新たな物性制御法を開発

 東京工業大学元素戦略研究センター/科学技術創成研究院の細野秀雄教授と、米国パシフィック・ノースウエスト国立研究所(PNNL)のピーター・スシュコ博士らによる研究チームは2016年8月、電子化物ガラスが、従来のガラスとは大きく異なる物性を持つことを、実験と計算で初めて明らかにしたと発表した。従来と同じ網目構造でありながら、微量の電子を混ぜた電子化物ガラスは、転移温度(Tg)が大幅に低下することが分かった。

 電子がアニオン(陰イオン)として振る舞う化合物群は、電子化物(エレクトライド)と呼ばれている。細野氏らの研究グループは2004年に、「12Ca0・7Al2O3(マイエナイト)」(以下C12A7)の酸素イオンを電子に置き換えた電子化物「C12A7:e-」の合成に成功した。これは、空気中で高温まで安定している初めての電子化物だという。C12A7自体は絶縁体であるが、C12A7:e-は、低温において超伝導の特性を示す。また、アルカリ金属と同等に電子を放出しやすいが、化学的に安定した物性を持っているという。

 酸素を含まない環境でC12A7:e-を過熱して融解し、それを急冷すると電子化ガラス(C12A7:e-ガラス)を得ることができる。このガラスは結晶のC12A7:e-とほぼ同じ程度の電子アニオンを含んでいるため黒色となるが、室温付近ではほとんど電気伝導を示さないという。

 研究グループは今回、C12A7:e-ガラスのTgと電子アニオン濃度について、その関係性を調査した。Tg以下の状態がガラスであり、過冷却融体の状態はTgで凍結された構造を持つ。網目が連続的につながっている構造であればTgは高くなり、網目が不連続になるほどTgは低くなる。網目のつながり程度は化学組成によって決まるため、Tgを変化させるには、これまで化学組成の変更が必要と考えられてきた。


ガラス転移の概念図 出典:東京工業大学他

 研究グループは、極めて低い酸素分圧の雰囲気で結晶のC12A7:e-を赤外線加熱炉で融解し急冷した。これを高温で空気中の酸素と反応して電子が消失しないようにして示差熱分析を行い、Tgを決定した。測定データから、ベースラインが吸熱側に急にシフトする温度を観測することができた。Tgは比熱のジャンプに相当する現象で、固体から液体の状態に変化する際に、固定されていた原子の重心が移動可能となるために生じたものだという。


xCaO・(100−x)Al2O3ガラスのガラス転移温度 (クリックで拡大) 出典:東京工業大学他

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