Fordが“完全な”自動運転車の開発を本格化へ:アナリストからは疑問の声も(1/3 ページ)
Ford Motor(Ford)は、完全な自動運転車の実現に向けて開発を加速させていくという。Fordが狙うのはカーシェアリングや配車サービス市場だが、これらの市場が活性化することは、個人が所有する自動車の数が減るということだろうか。
2021年には完全自動運転車の実用化を狙う
Ford Motor(以下、Ford)のCEO(最高経営責任者)であるMark Fields氏は2016年8月16日(米国時間)、「当社は、自動運転車の実現を目指していく上で、段階的に開発していくつもりはない」との考えを明らかにした。
アクセルやブレーキペダル、ハンドルなどを一切搭載せず、ドライバーが乗車するかどうかを選択可能な、完全な自動運転車の実現に向けて、一直線に突き進んでいく考えだという。
Fields氏は、「2021年初めには、完全自動運転車を実用化し、配車やカーシェアリングなどのサービス提供を開始したい」と宣言した。
今回のFordの発表には、注目すべき点が2つある。1つ目は、ドライバーが不要な完全自動運転車をゼロから作り上げるという決断を下した点。そして2つ目は、個人の移動手段が変化する中で役割を果たすべく、崇高な目標を掲げたという点だ。
ドライバーは必要か、不要か
現在、ほとんどの自動車メーカーが、完全自動運転車の実現に向けて、段階的に開発を進めている。Fordの開発の仕方はGoogleが「Google Car」を開発している方法とよく似ていて、例えばトヨタ自動車(以下、トヨタ)が提唱している“運転助手モデル”などとは大きく異なる。トヨタは、完全自動運転を実現する上で、機械による運転と人間による運転とを組み合わせることが重要なステップになると考えているのだ。
Toyota Research InstituteのCEOであるGill Pratt氏は2015年4月に、ドライバーの動きを自動的に制御したり微妙に調整することで危険を回避する、「Guardian Angel(守護天使)」機能について語っている。つまりトヨタ自動車は、最初は完全な自動運転車を目指すのではなく、ドライバーが事故を回避できるようにハンドルを取ってサポートすることが可能な自動車を開発したいという考えだ。
自動車業界は現在、命を救うためにはどのアプローチが適しているのかという点で、合意できていない状況にある。しかし、Fordは今回、独自の結論を明示してみせた。
Fields氏は、「Fordは、自動運転車のターゲット市場として、配車サービスやカーシェアリングサービスを挙げている。ただ単に、自動運転車の実現を目指すのではなく、完全自動運転車によって実現可能な、新しいモビリティーソリューションとビジネスチャンスを提供することを目指すのだ」と述べている。
同氏は、「世界は常に速いスピードで変化しているため、傍観しているわけにはいかない。当社は、こうした変化を積極的にけん引していく考えだ」と付け加えた。
変化を積極的に受け入れていくというFordの姿勢は、称賛に値する。投資コミュニティーやメディアにも、魅力的に映るはずだ。
しかしFordは、配車やカーシェアリングなどの計画の他に、完全自動運転車を保有するのはどのようなユーザー層なのか、またその導入場所や導入方法などについて、見通しをうまく説明できていないようだ。
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