超薄膜内でナノ粒子を同心円パターン状に配列:温度と水蒸気量を最適制御しパターン形成
物質・材料研究機構(NIMS)の桜井健次氏らは、超薄ゼリーシート内でナノ粒子を同心円パターン状に配列させる技術を開発した。ナノ粒子の機能を引き出すことができる新技術は、光学デバイスやセンサー部品などへの応用が期待される。
光学デバイスや電子/磁気センサー部品などに応用
物質・材料研究機構(NIMS)先端材料解析研究拠点高輝度光解析グループの桜井健次グループリーダーと蒋金星ジュニア研究員は2016年9月、超薄ゼリーシート内でナノ粒子を同心円パターン状に配列させる技術を開発したと発表した。研究成果は光学デバイスやセンサー部品などへの応用が期待される。
超薄ゼリーシート内にナノ粒子のパターンを形成させるには、滴下した液滴中の物質が超薄ゼリーシートの狭い空間の中を、適切な速度で拡散させることが必要だ。研究チームは、作業時の温度環境と水蒸気量を適切に制御することで、0.1μm以下という極めて薄い膜内に、リーゼガング環のナノ粒子同心円パターンを作成することに成功した。これまでは、少なくとも数ミクロン程度の膜厚がないと、リーゼガング環を作製することは難しいといわれてきた。
研究チームは、精密に温度制御ができる冷蔵庫を用い、低温環境で研究を行った。その中に試料を入れておく密閉容器があり、容器内の水蒸気量も制御できるようにした。ゼラチンのゼリー表面は温度によって性質が変化する。低温環境では適度の撥水性を維持しており、滴下した液滴の中央から拡散していく物質の量を、適切なレベルに設定できることが分かった。また、水蒸気量は媒質の乾燥などによる劣化を防ぎ、均質性を確保するために重要な役割を果たしていることも分かった。
今回開発した技術は、ナノ粒子を規則的に配列制御できる可能性を示したものである。従来の微細加工技術では比較的難易度が高かった、同心円状の配列も容易に行えるようにした。これらの特長により、集光光学部品などの光学デバイスや、電子/磁気機能によるセンサー部品などへの応用などが期待されている。
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